空間・プロダクトデザイナーとして辣腕をふるう二俣公一さんは、以前190Eに乗っていたそうです。過去にも様々なクルマに乗りながらも、気になるのはヴィンテージやオールドモデルだとか。それだけに新型Aクラスの進化ぶりには驚きを隠せない様子。デザイナーの立場から機能を含めたAクラスのデザインについて、たくさんの貴重な意見や批評、そして分析の言葉をいただくことができました。
メルセデス・ベンツ日本(以下:M):
本日はメルセデス・ブランドの情報発信拠点「メルセデス ミー(Mercedes me)」にお越しいたただきありがとうございます。二俣さんに、新型Aクラスをデザイン視点でご覧いただき、率直なご意見やご感想をうかがえればと思います。早速フロント部分からご説明させていただきます。
二俣公一(以下:F):
以前、190Eに乗っていましたが、さすが最新モデルとあって明らかに顔付きが違いますね。しかしメルセデスのイメージを少しも損なわず、むしろ“らしさ”を上手く表現しているところに感心します。
M:新型CLSからこのフロントデザインが採用され、新型Aクラスにも踏襲されています。
F:躍動感があって、いい意味で獰猛さが感じられ、スポーティな走りを想像させてくれるデザイン。僕はクルマを選ぶ時、後ろ姿も重要視する性分なので、リア周りも拝見してみたいです。
M:テールランプにLEDが採用されたことで、ランプを分割できるようになりました。それまではランプは一体型でしたが、LEDになってからは任意の場所に切り込みを入れられるようになり、トランクルームの間口を広くとれるようになったんです。
F:これは意外に気づかないかもしれませんが、テクノロジーの恩恵により、デザインの自由性が高まった好例ですね。ユーザーにとっても使い勝手に寄与する大きなポイントだと思います。
M:それではまず、後部座席に座ってみてください。
F:外観からは想像できない居住性。ゆったりと座れます。もう少し窮屈そうなイメージだったので驚きました。
M:実は現行Cクラスよりもホイルベースが短いにもかかわらず、足元の前後が51mm広がり、天井も18mm高くなっています。数字的にはわずかに思えますが、比べてみると印象がだいぶ違うはずです。
F:居住性の高さは、インテリアデザインがきちんと整理されているからこそなのでしょう。次に運転席に座ってみます。第一印象で目に飛び込んでくるのは、各種メーターやナビを表示するワイドなスクリーンディスプレイ。所有しているクルマが基本古いモデルなので、この次世代的なデザインと機能には圧倒されます。
M:一体型パネルはE、S、CLS、新型Gクラスに採用されているんですがこれほどワイドではありません。2つの10.25インチワイドディスプレイ*を搭載し、タッチパネル仕様になったのもこの新型Aクラスが初めてです。車内での各種コントロールは、タッチパネルとステアリングに集約されたスイッチ、センターコンソールに配置されたタッチパッド、そしてボイスコントロールを可能にする「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」から自由に選べます。*A 180 スタイルの場合
F:シチュエーションに応じて、操作方法を任意に選択できるのは、ドライバーからしたらとてもありがたい機能です。やはり最も気になるのが「MBUX」。声によるコマンドでどこまで操作できるのでしょうか?
M:エアコン、ライト、読書灯、ラジオ、ナビなどの操作、つまり運転に直接関わらないほとんどすべてのことが声だけで操作できます。
F:それは面白いですね! ナビのデータなど、今後アップデートはされていくのでしょうか。
M:マップデータは更新されていきますし、学習機能自体もブラッシュアップを重ねながら更新していく予定です。
F:どこまで学習機能が賢くなっていくのか、ぜひ使い込んでみたくなりますね。それからひとつ気が付いたのですが、ドアミラーの位置が絶妙ですね。斜め前方の死角が少なくなったように思えます。
M:よくお気づき下さいました。ドアミラーをドライバー寄りのやや後方に置き、位置の最適化をはかっています。
F:これも機能に則したデザインの妙といえますね。ドライバーに従来とは位置が違う違和感を与えずに、自然に死角の少ないドライビングが実現できる。こうしたデザインにとどまらず、安全性を追求した機能性もメルセデスの本質にある重要な要素ですよね。さまざまなセーフティ性能を搭載しているなかで、自動駐車機能も凄いですが、レーンチェンジも安全かつ自動に行えるんですよね。
M:高速道路でウィンカーを出すと、レーダーで周囲にクルマがいないのを確認し、それから2秒後に自動でレーンチェンジします。白線はフロントのカメラが認識し、レーンをはみ出さずに走るので、高速道路ではハンドルに手を添えるだけで容易に運転できます。前方のクルマを追尾する設定にすれば、もしも前方のクルマが100kmで走っていて、80kmに減速したらこちらも減速し、停止をしたらこちらも自動停止します。高速道路での疲れ方が断然違います。疲れないということは事故を起こしにくい。それがメルセデスの安全性に対する考え方でもあります。
F:どれだけ万能なコンピュータが内蔵されているのか想像もできません。こうした説明を伺っていると、最先端の機能を搭載したクルマも欲しくなりますね(笑)。デザイン、機能にどれだけ腐心しているか想像に難くない。プライスを聞いてもまったく驚かない。むしろ安く思えます。Aクラスはユーザーにとっての入り口になるので、結局最も具合のいいところを、いい具合にパッケージしている。一番美味しいとこどりのモデルだと思いますね。
M:もちろんオプションをつけるほど機能面は充実していきます。乗り出しは320万円ちょっとですが、オプションによって上位クラスを凌駕する仕様にアップグレードできる余地も十分にあります。
F:デザインにも感心しました。他社のクルマは大抵新しく生まれ変わると、なぜか品格を失うケースがよく見受けられます。デザイナー視点からしたらちょっとどうかな? ってモデルも少なからず目にします。ところがメルセデスはなぜか新しくなっても品格を損なうことがない。それはなぜなのかといつも思うのですが、そこがメルセデスたる所以であり真髄なのかもしれません。新型Aクラス、想像以上のデキだと率直に思いました。
ここからは、あらためて新型Aクラスを見て触れた感想を伺いました。さすがにデザイナーの視点から語られるポイントが次々に飛び出してきます。二俣さんならではの総論と結論を、ぜひお聞きください。
91年式の最終モデルですね。10年くらい前に手に入れて、4年ほど乗りました。小さいクルマでしたが、当時の上位車種のテクノロジーが全部詰まっていて、車内での静穏性も凄かったですし、今まで乗ったクルマの中で一番素晴らしかった。
完璧すぎたからです(笑)。デザイナーの性分なのか、完成度の高いものより、少しスキがあったり、不完全な部分があるものに魅かれるんですよ。その後はフランス車に買い替えました。フランス車は造形や美意識に独特なものがあって、たとえ機能を犠牲にしても自分たちの価値基準を貫く妙なクセがあるんです。それを良しとするか否かはユーザー次第ですが、僕は良しと思えるタイプなので(笑)
クルマは生活と特に密接なツールでもあるので、その傾向は特に強いと思います。フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、日本。それぞれに個性と味があると思います。
完成度を突き詰めていくと結局ドイツ車に行き着くと思います。ドイツ車はグローバルスタンダードを最も体現している。ニュートラルな目線で、正しくフォルムや機能性のバランスをとっているんです。これはクルマに限らず、ドイツプロダクト全般に言える傾向。メルセデスはその筆頭であり、代表ですね。
機能に寄り添う徹底した合理主義、無駄を排する思想。必要なものは積極的に取り入れ、きちんと整理をしたうえで、ラインのひとつまでコントロールして美しさを追究する。その姿勢はメルセデスから確実に見てとれますね。ゆえに完璧なクルマに着地しているのでしょう。
どの生産国にも共通して言えるのですが、2000年以降クルマのデザインがより平均化した印象があります。おそらく安全性能や空力などを突き詰めていくと、同じような結論に至るからなのかもしれません。そういう意味では最近のクルマのデザインは面白みに欠けます。ただしメルセデスはディテールから匂い立つメルセデスらしさがあり、好き嫌いの個人的な意思を超える完璧なデザインを導き出していると思います。新旧のモデルに共通していえることです。
何より運転席に座った時に凄みを感じました。あれだけ複雑な機能やスイッチ類を見事に整理し、まとめ上げている。デザイナーから見れば、いかに大変な作業だったかがすぐに読み取れます。もちろんただまとめただけではなく、使いやすさが大前提にある。シートのステッチングひとつ見ても、目が行き届いていることもわかります。クルマのデザインにはたくさんの人間が関わっている。パーツによってOEMで製作している部分もあるかもしれない。にもかかわらず、まるでひとつの人格で統合されたかのように、細部までメルセデスの息がかかっていると感じられる。実はけっこう意思統一がはかられていないデザインのクルマって多いんですよ。デザイン思想の破綻が垣間見えてしまうと、一気に魅力を感じなくなってしまいます。メルセデスにはそれがありません。
クルマを運転する喜びは肉体の延長線上に位置していて、アナログ感覚も大事だと思っています。ハイテクな機能のおかげで安全性を担保してもらえることはドライバーにとってうれしい限りですが、油断なく運転しなければいけない古いクルマならではの面白さも実際にはあると思います。そこに古いクルマの魅力を感じているのかもしれません。しかし安全性を重視するならば、最新のAクラスは最良の選択だと思いますよ。
ユーザーの嗜好やルーティンを判断し、ユーザーにフィットした反応をするように進化していくという意味では、コミュニケーションを重ねていく雰囲気を味わえるので、デジタルといえどもアナログ的な感覚がありますよね。それは刺激的であり、長くクルマと付き合う上で大きな楽しみになると思います。
ほとんどゼロといっていいのですが、あえてデザイナーの立ち位置から要望を挙げるとするならば、リアのデザインでしょうか。昔のクルマはリアを見るだけで、車種がわかるくらいの個性がありました。バックサイドのルックスだけで、いいなあって思えるクルマがたくさんあったように思います。メルセデスに限らず、今のクルマ全般が没個性のリアデザイン。歴史的に技術や走行性を追求していった結果、行き着いたスタンダードなのだとは思いますが。と、あえてそれだけしか挙げられないくらい新型Aクラスの完成度は抜きん出ています。
二俣公一(空間・プロダクトデザイナー)
福岡と東京を拠点に、空間デザインを軸とする「ケース・リアル」とプロダクトデザインに特化する「二俣スタジオ」の両主宰。インテリアや建築、家具・プロダクトなど多岐にわたりデザインを手がける。ここ最近では「イソップ 日本橋高島屋S.C店」「ATON AOYAMA」「RESTAURANT SOLA」などの空間デザインを手掛けるほか、国内外で住宅プロジェクトやテナントビルの計画等も進行中。またプロダクトでは、イタリアOPINION CIATTI社のSHOE STOOLやベルギーvalerie_objectsのカトラリーセットをデザインするなど、現在も国内外のメーカーと開発が進行中。
www.casereal.com
www.futatsumata.com
12月20日(木)に開催されたイヤーエンドパーティ「Hi, Beams」。大いに盛り上がった1日の様子をレポートします。
ビームス内でも大のドライブ好きとして知られる敏腕男性プレス&女性ディレクターに聞いた、いますぐ行けるドライブコース。
ヴィンテージやオールドモデル好きな空間・プロダクトデザイナー、二俣公一さんが紐解く、新型Aクラスの機能性とデザイン性について。
鎌倉に住んで10年。ビームスのメンズカジュアル部門のディレクターを務める中田慎介さんが語る、新型Aクラスのある暮らしとは。
P.M.Kenさんと河村康輔さん。両アーティストがAクラスを題材にアートを作ると、いったいどんな作品が生まれるのか。
自身のバンド、ペトロールズの歌とギターを担当し、様々なアーティストのサポートやプロデュース業も行う神出鬼没の音楽家・長岡亮介さんのプレイリストトーク。
新型Aクラスにまつわる10の魅力。
ラジカセから流れてくるMCの声は、いつも一方通行だった。ハガキやFAXを送って、運が良ければこちらのリクエストに応えてくれたけど、基本的にはいつも誰かの好きな曲をジッと聴いているだけ。でも、「MBUX」はちがう。「ハイ、メルセデス」の一声で、音声入力に対応。運転中、プレイリストにあるお気に入りの曲をリクエストすれば、その曲をすぐに流してくれる。もちろん道案内や、空調などの車内環境にもバッチリ対応。ドライブをよりスムーズなものにしてくれる。
優れたデザインには、それに見合うくらいの使える機能が伴っていて欲しい。たとえば家にある椅子。かっこいいのは当たり前で、犬もぐっすり眠っちゃうくらいの快適性が欲しい。新しいAクラスはもちろんその両方を兼ね備えている。ブラックを基調に、アクセントとしてシルバーがあしらわれたインテリアは、クール&ラグジュアリーな装い。シートの座り心地もストレスフリーだし、従来に比べてスペースが広く感じるように設計されているので、快適性も申し分なしなのだ。
コートを颯爽と駆け巡り、貪欲にポイントを獲得したマイケル・ジョーダン。その手にボールが渡れば、誰も彼を止めることができなかった。バスケットボールのコートは決して大きくはない。だからこそ、全力のダッシュと機敏な動きが求めらる。新しいAクラスのエンジンは、より軽量になりながらも排気量を削減し、エンジン騒音も低減。またトランスミッションもシフトの作動が素早く、変速もスムーズ。つまり、ジョーダンに負けじと劣らないスポーティな走りが特徴なのだ。
自動運転技術は人々の安全にも向けられている。高速道路での渋滞の最後列に接近したときや、交差点では歩行者や車両の飛び出しに対して自動でブレーキをかけてくれて、なおかつ回避したあとにクルマが車線内に入るように運転をアシストする機能まである。万が一衝突したときに備えて屈強な設計になっていると同時に、大きな衝突音による耳への負担を減らすシステムも搭載。これらは歩行者や周りのクルマだけじゃなくて、自分自身をも守ってくれるということ。
クルマに乗ってどこへ行こう? 家族と小旅行、あるいは恋人と買い物などなど。クルマがあれば行動範囲が広がるが、いずれにせよ荷物は多くなる。そんなときはファッションにもアウトドアにも通用する、フィッシィシングベストのような万能で高い収納力が必要だ。でも大丈夫。新しいAクラスには、広く改善されたラゲッジルームが存在する。奥行きも幅もプラスされ、なんと29L分の増量に成功し、370L(※欧州参考値)もの容量を誇る。これなら仲間とのゴルフだって安心だ。
幼い頃、夢の中でいつもドライブをしていた。助手席には一緒に眠るぬいぐるみがいて、ラジオをかけたり、空調を調整してくれた。新しいAクラスに搭載された「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」も、そんなドライブの相棒役を務めてくれる。インパネ横のディスプレイは、スイッチやパッドではもちろん、スクリーンに直接タッチして操作することも可能。しかも、ユーザーの行動を学習し、行きたい場所、好みの曲の提案をしてくれる頼れるヤツなのだ。
自動お掃除ロボのルンバの誕生には多くの人々が驚いた。地雷探査機のノウハウを家庭に応用し、文字通り“自走”で掃除してくれる便利なロボ。自走といえば最近ではクルマだってオートマチックなシステムを持ち、ドライブのアシストをしてくれる。しかも、その機能はどんどん向上しているのだ。たとえば車線検知機能では、消えかかった不明瞭な車線も検知してくれたり、高速道路で渋滞にハマった場合は、前走車に合わせて自動で発進してくれる。まったく便利すぎる世の中だ。
暗闇のなかを運転していると、ピカッとリフレクターが光り、そこに何かがあることを知らせてくれる。だけど、新型Aクラスの場合は暗闇じゃなくても(もちろん暗闇でも)センサーでさまざまなものを感知し、ドライバーに知らせてくれる。たとえば道路の標識をフロントガラスに付属されているカメラで読み取って注意を促してくれたり、手ばなし運転を検知するとゆるやかに減速してくれたりなど。でも、くれぐれもセンサーに頼りすぎないように注意したいところだ。
90年代に夢中になって遊んだゲームボーイ。持ち歩けるゲーム機なんて、当時は画期的すぎた。でも、いまはどうだろう? ゲームボーイはもはや“レトロ”に分類され、家でも外でもみんなスマホをいじっている。いろんな技術やテクノロジーが街中にあふれているのだ。スクリーンをタッチしたり対話しながら操作する「MBUX」や、さまざまなオートマチックシステムを搭載した新型Aクラスは、ある意味では最新の装備をまとった新しいガジェットのようなものなのかもしれない。
女の子は美しいラインのデザインに弱い。きっと指輪を欲しがるのもそのせいだ。淀みなく流れるような流麗なデザインは、身につけていても気持ちよさを感じる。だから、Aクラスのエクステリアにもうっとりするにちがいない。風の流れを計算した角のないラインと、品があってスマートなルックス。それにダイナミックさと、どこかスポーティな要素も加わっている。優しさと力強さが調和したデザインには、きっと生粋のクルマ好きですら思わず感嘆の声をあげてしまうだろう。