「ハイ、メルセデス!」「どうぞお話しください」「今日の調子はどう?」「最高!」。クルマと会話をする時代の幕開けとなった、10月18日に行われたメルセデス・ベンツ Aクラスの発表会。ただの“移動する手段”ではなく、より生活に密着した一種の“デバイス”。いかに優れ、ユーザーエクスペリエンスを豊かにするものなのか、発表会の模様とアフターパーティの様子をレポートします。
会場は、きたる2020年に向けて急ピッチで再開発が進んでいる新虎通りに、発表会当日にオープンした商業施設「新虎通りCORE」。新たな時代の幕開けにふさわしい場所で行われました。妖艶なレッドとブルーの明かりのもと、Aクラスがその全貌を現し、発表会がスタート!
喝采が飛ぶなか登壇したのは「メルセデス・ベンツ日本株式会社」代表取締役社長兼最高経営役員(CEO)の上野金太郎氏。その後「ダイムラー社」研究開発部門から、新型Aクラスの代表的機能「MBUX」のUIコンセプト担当マネージャーであるトビアス・キーファー氏と開発リーダーを務めたオリバー・ゾルケ氏がそれぞれプレゼンテーションを行いました。
今年だけで16車種、85モデルの新型を発表しているメルセデス・ベンツですが、新型Aクラスはいままでのそれとは違い“次世代のクルマ”を強く打ち出すものであると、登壇者の誰もが主張していました。ではなにが次世代なのか。それが「MBUX」というまったく新しいユーザー体験です。
メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス、略してMBUX。言葉で、指先で、直感的にクルマのさまざまなシステムにアクセスでき、制御できるシステムです。さらに、搭載されたAIが好みや行動を学習し、使えば使うほど自分の好みを汲み取り、サポートしてくれる。また、上の写真にある通り、本来メーターが並ぶ運転席のフロントから通常ナビが取り付けられている部分まで、タッチパネルが取り付けられ、指先で操作が可能になっています。極めつけは「ハイ、メルセデス!」。そう呼びかければ「ちょっと暑い」「〇〇に行きたい」と話しかけるだけで、音声アシスタントがそれに応えてくれます。いままでのように、なにかに触れて操作する必要はありません。
デモンストレーションではこんなやりとりが。「ハイ、メルセデス!」「どうぞお話しください」「大阪はサングラスが必要?」「現在の大阪は概ね晴れ。気温は23度です」。「ハイ、メルセデス!」「どうぞお話しください」「ちょっと暑いんだけど」「24度に設定します」。曖昧な言葉でもしっかり反応してくれる、極めて優秀な音声認識システム。音楽も、車内のライティングも声で指示を出すだけでOK。いままでのクルマに比べ、より相棒感が増すことでしょう。さらに、Qi規格対応のスマートフォンをワイヤレスで充電するドックも完備。
交通事故の原因の多くは脇見運転。それは景色を見ていたからではなく、ナビやオーディオを操作したり、スマートフォンに気を取られていたりということが圧倒的に多いらしく、このMBUXは、そんなリスクを減らしてくれる役割も果たします。
発表会も中盤にさしかかったところで、識者たちによるトークセッションがスタート。登壇者は元レーシングドライバーであり、現在はモータージャーナリストとして活動する清水和夫さん、「森ビル株式会社」の都市開発本部計画企画部メディア企画部 部長の矢部俊夫さん、イスラエルでの女性の社会進出に習い、女性が活躍できる社会を目指す団体「イスラエル女子部」代表の三木アリッサさん、会社のコンサルティングを行うかたわら「Newspicks」プロピッカーを務める占部伸一郎さんの4名。テーマは「モビリティがリードする都市の進化」。ここからトークセッションの一部を抜粋してお届けします。
占部:まずは、新型Aクラスの感想から伺えますか?
清水:しゃべるクルマというイメージが先行していますが、洗練度がグンと上がりましたね。走り心地や乗り心地も格段に上がりましたし、「Sクラス」に搭載されている、もしくはそれ以上のドライブアシストシステムも備わっている。非常に先進的な技術が詰め込まれていると感じました。
矢部:私たちの世代ならわかると思いますが、テレビドラマの「ナイトライダー」に、キットというクルマに搭載された人口知能が登場するんです。当時僕は大学生でして、いつかはこんな時代がくるのかなと思っていましたが、ついにきたかと思いました。いよいよクルマとコミュニケーションが取れる時代になったんだと、すごく感銘を受けましたね。
三木:私はクルマに関して初心者でして、だからこそ声で操作できるのは非常にうれしいなと思いました。運転中の操作も前方を見ながらできますし、安全ですよね。
占部:それでは本題に移っていきたいと思います。まず清水さんから、都市の進化という観点で、過去、現在、未来のお話をしていただけますか?
清水:日本だけじゃなく、世界を走るとどうも運転しづらいなと思うんです。でも、それはクルマが悪いのではなく、道路が昔の規格でつくられたままだから。もっと交通をスムーズにするには、道路や街をリデザインすることが必要だと思うんです。クルマもそうですが、都市も合わせてデザインしていく。それが今後、より大事になってくると思います。
清水:例えば、フランスのナントという街は、中心部から信号を取っ払ったんです。そうすることで逆に事故が減った。カナダのトロントでは、IT企業が都市のデザインをしてさまざまな情報にアクセスできるようになってきました。人々の生活をもっと豊かにしようという取り組みが各地で行われている。世界の動きとして、点ではなく都市ごとデザインしようとしているんですね。
占部:三木さんはテクノロジーによって、未来のモビリティはどうなっていくと思いますか?
三木:イスラエルでいうと、クルマはクルマとしてではなく、デバイスという認識になりつつあるのかなと思います。ハンドルがあって、アクセルがあって、シフトレバーがあるということではなく、移動する時間をどう使えて、目的地についたときにいかにパフォーマンスを上げてくれるか。そういった部分にイスラエルの人たちは重きを置いていると思います。
占部:ビジネスの世界でも、いかにクルマをデバイスとして活用していくかということが叫ばれていますが、いままでは実現されていなかった。でも、このAクラスを見てなるほどなと思いました。それが実現可能になるわけですからね。では、そのデバイスとしてのクルマという部分、清水さんはどうお考えですか?
清水:デバイスという側面からいうと、いろんな情報や端末にコネクトする、繋がるということが大事だと思います。ETCも渋滞もカーシェアリングも、そうすることですべてが好転していくのではないかと。あと、クルマは現代の技術やライフスタイルを後追いするので、2030年くらいのビジョンを描いて設計していくことが重要だと思っています。
矢部:都市のモビリティということですが、都市といっても地方と東京ではまったく違います。なので、今回は東京を想定してお話させていただきます。みなさんも知ってのとおり、一番の問題は渋滞で、クルマをどう流していくかが課題なんです。たとえば、ビッグデータを活用して信号との連動ができて、周囲のクルマの速度がわかったとする。そうするだけでかなり渋滞は緩和されるはずです。人とクルマ、そしてデータを集約するセンター。通信の世界に近いですが、みんなでそれらを共有して、インフラを最大限活用していくというのが大事なのかと。
占部:IT企業の「アリババ」が、地元中国の杭州市で信号を最適化したことで渋滞が劇的に緩和されたということがありましたけど、これからはクルマからネットワーク上にデータを発信していくことが大事ですよね。
清水:日本、とくに東京は駐車できる場所が極めて少ないし、あったとしても高額です。だから、道路の再配分も必要なことだと思います。
矢部:クルマと駐車場の関係は非常に大切ですよね。たとえば3.11のとき、六本木ヒルズから道路を眺めていたんですけど、テールランプで道路が真っ赤だったんです。全然動けていなかった。それほどクルマの台数と道路の幅や駐車場の数がかけ離れているんです。
清水:交差点のクルマの流れの情報を集積して最適化していくという信号のIT化は、日本の政府も取り組んでいます。それとひとつ事例がありまして、3.11のときの石巻では、停電のため信号が使えなかった。なので警察が手信号でクルマを誘導していたんです。そのときはまったく渋滞が発生しなかったんですが、信号が復旧した途端に渋滞がおきた。だから、今後は社会実験として信号を無くしてみるとか、そういったこともやっていくべきだと思います。
三木:イスラエルではビッグデータをとって、それが人為的な事故なのか、信号が見にくいからなのか、そういったものを集積して分析しています。日本でも豊洲で実証実験がはじまりましたよね。
矢部:渋滞の経済的損失というのを理解するのもいいことだと思うんです。渋滞による時間の無駄もそうですが、いつ着くのかというストレスとも因果関係がある。それによって目的地についたときにはパフォーマンスが落ちてしまいますからね。
清水:ある自動運転の技術者は「自分は1日の2時間くらいを渋滞で過ごしているから、渋滞に寿命を4年とられているんだ」と言っていました(笑)。だから、その時間をもっと生産性のある時間にしなければいけない。今回の新型Aクラスも、次の時代に向けてとても重要な役割を担っていくのかなと思います。
占部:渋滞を緩和するというところで、現在カーシェアリングが推し進められています。そうなると将来的にクルマがなくなるのでは? と思ってしまうのですが、いかがでしょうか?
清水:以前メルセデス・ベンツの幹部の方に聞いたのですが、私たちはそんな短期的なビジョンは描いていないと。社会の問題を解決するためには自動車メーカーもサスティナブルにならなきゃいけない、と言っていました。そうなったらシェアは避けて通れないわけです。それをするためには、まずコネクトする技術が必要なんだと。
占部:こんなに伝統的な会社が革新的なことをやるというのは、素晴らしいことですよね。
清水:ドイツでは、若いジェネレーションはクルマは所有しなくてもいい、シェアリングでいいという考え方が広まっています。若い世代からライフスタイルが変わりはじめたんです。クルマが富の象徴ではなくなってきた。そしてそのフォーマットはメルセデス・ベンツが形成してきましたけど、自らその時代は終わった、それを壊していこうという風潮になってきているなと感じますね。
発表会から2時間後、19時から「ビームス」プロデュースによるパーティ“Hi, Mercedes”がスタート! 会場には新型Aクラスをひと目見ようと多くの来場者で大混雑。そしてAクラスの前には、“次世代のクルマ”を体感しようと、待ちの列ができていました。
パーティに華を添えたのはLicaxxxとSeiho。このDJ陣とメルセデス・ベンツの組み合わせが、今回の新型Aクラスを物語っているように、いままでは富裕層のものと認識されてきたメルセデス・ベンツが、若者も乗れて、その感度まで上がってきたように感じました。
それに呼応するかのように、場内を埋め尽くす人は従来のユーザーのほか「ビームス」が企画の一翼を担っているということもあり、ファッション好きな来場者も大勢見受けられました。いままでの新車発表会とは異なる、まるで海外のクラブのような空間に新型Aクラスが映える、“次世代”の幕開けを予感させるパーティでした。
12月20日(木)に開催されたイヤーエンドパーティ「Hi, Beams」。大いに盛り上がった1日の様子をレポートします。
ビームス内でも大のドライブ好きとして知られる敏腕男性プレス&女性ディレクターに聞いた、いますぐ行けるドライブコース。
ヴィンテージやオールドモデル好きな空間・プロダクトデザイナー、二俣公一さんが紐解く、新型Aクラスの機能性とデザイン性について。
鎌倉に住んで10年。ビームスのメンズカジュアル部門のディレクターを務める中田慎介さんが語る、新型Aクラスのある暮らしとは。
P.M.Kenさんと河村康輔さん。両アーティストがAクラスを題材にアートを作ると、いったいどんな作品が生まれるのか。
自身のバンド、ペトロールズの歌とギターを担当し、様々なアーティストのサポートやプロデュース業も行う神出鬼没の音楽家・長岡亮介さんのプレイリストトーク。
新型Aクラスにまつわる10の魅力。
ラジカセから流れてくるMCの声は、いつも一方通行だった。ハガキやFAXを送って、運が良ければこちらのリクエストに応えてくれたけど、基本的にはいつも誰かの好きな曲をジッと聴いているだけ。でも、「MBUX」はちがう。「ハイ、メルセデス」の一声で、音声入力に対応。運転中、プレイリストにあるお気に入りの曲をリクエストすれば、その曲をすぐに流してくれる。もちろん道案内や、空調などの車内環境にもバッチリ対応。ドライブをよりスムーズなものにしてくれる。
優れたデザインには、それに見合うくらいの使える機能が伴っていて欲しい。たとえば家にある椅子。かっこいいのは当たり前で、犬もぐっすり眠っちゃうくらいの快適性が欲しい。新しいAクラスはもちろんその両方を兼ね備えている。ブラックを基調に、アクセントとしてシルバーがあしらわれたインテリアは、クール&ラグジュアリーな装い。シートの座り心地もストレスフリーだし、従来に比べてスペースが広く感じるように設計されているので、快適性も申し分なしなのだ。
コートを颯爽と駆け巡り、貪欲にポイントを獲得したマイケル・ジョーダン。その手にボールが渡れば、誰も彼を止めることができなかった。バスケットボールのコートは決して大きくはない。だからこそ、全力のダッシュと機敏な動きが求めらる。新しいAクラスのエンジンは、より軽量になりながらも排気量を削減し、エンジン騒音も低減。またトランスミッションもシフトの作動が素早く、変速もスムーズ。つまり、ジョーダンに負けじと劣らないスポーティな走りが特徴なのだ。
自動運転技術は人々の安全にも向けられている。高速道路での渋滞の最後列に接近したときや、交差点では歩行者や車両の飛び出しに対して自動でブレーキをかけてくれて、なおかつ回避したあとにクルマが車線内に入るように運転をアシストする機能まである。万が一衝突したときに備えて屈強な設計になっていると同時に、大きな衝突音による耳への負担を減らすシステムも搭載。これらは歩行者や周りのクルマだけじゃなくて、自分自身をも守ってくれるということ。
クルマに乗ってどこへ行こう? 家族と小旅行、あるいは恋人と買い物などなど。クルマがあれば行動範囲が広がるが、いずれにせよ荷物は多くなる。そんなときはファッションにもアウトドアにも通用する、フィッシィシングベストのような万能で高い収納力が必要だ。でも大丈夫。新しいAクラスには、広く改善されたラゲッジルームが存在する。奥行きも幅もプラスされ、なんと29L分の増量に成功し、370L(※欧州参考値)もの容量を誇る。これなら仲間とのゴルフだって安心だ。
幼い頃、夢の中でいつもドライブをしていた。助手席には一緒に眠るぬいぐるみがいて、ラジオをかけたり、空調を調整してくれた。新しいAクラスに搭載された「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」も、そんなドライブの相棒役を務めてくれる。インパネ横のディスプレイは、スイッチやパッドではもちろん、スクリーンに直接タッチして操作することも可能。しかも、ユーザーの行動を学習し、行きたい場所、好みの曲の提案をしてくれる頼れるヤツなのだ。
自動お掃除ロボのルンバの誕生には多くの人々が驚いた。地雷探査機のノウハウを家庭に応用し、文字通り“自走”で掃除してくれる便利なロボ。自走といえば最近ではクルマだってオートマチックなシステムを持ち、ドライブのアシストをしてくれる。しかも、その機能はどんどん向上しているのだ。たとえば車線検知機能では、消えかかった不明瞭な車線も検知してくれたり、高速道路で渋滞にハマった場合は、前走車に合わせて自動で発進してくれる。まったく便利すぎる世の中だ。
暗闇のなかを運転していると、ピカッとリフレクターが光り、そこに何かがあることを知らせてくれる。だけど、新型Aクラスの場合は暗闇じゃなくても(もちろん暗闇でも)センサーでさまざまなものを感知し、ドライバーに知らせてくれる。たとえば道路の標識をフロントガラスに付属されているカメラで読み取って注意を促してくれたり、手ばなし運転を検知するとゆるやかに減速してくれたりなど。でも、くれぐれもセンサーに頼りすぎないように注意したいところだ。
90年代に夢中になって遊んだゲームボーイ。持ち歩けるゲーム機なんて、当時は画期的すぎた。でも、いまはどうだろう? ゲームボーイはもはや“レトロ”に分類され、家でも外でもみんなスマホをいじっている。いろんな技術やテクノロジーが街中にあふれているのだ。スクリーンをタッチしたり対話しながら操作する「MBUX」や、さまざまなオートマチックシステムを搭載した新型Aクラスは、ある意味では最新の装備をまとった新しいガジェットのようなものなのかもしれない。
女の子は美しいラインのデザインに弱い。きっと指輪を欲しがるのもそのせいだ。淀みなく流れるような流麗なデザインは、身につけていても気持ちよさを感じる。だから、Aクラスのエクステリアにもうっとりするにちがいない。風の流れを計算した角のないラインと、品があってスマートなルックス。それにダイナミックさと、どこかスポーティな要素も加わっている。優しさと力強さが調和したデザインには、きっと生粋のクルマ好きですら思わず感嘆の声をあげてしまうだろう。