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従来の枠にとらわれない、新しい八百屋。

多摩川を越えればすぐに東京都、渋谷までは電車で30分。そんなアクセスのよさからベッドタウンとして人気の神奈川県川崎市の新丸子。その駅から5分ほど歩いたところに「中三青果店」は店を構えます。

お店の佇まいはスタイリッシュでモダン。知らずに通れば八百屋と気づかないかもしれません。そんな洗練された店内の雰囲気とは裏腹に、創業は1963年。以前は隣駅の向河原で営業していましたが、2023年、3代目店主の山田海斗さんのアイデアでいまの場所に移転してきました。

「前の店舗だと頭のなかのアイデアを表現するには狭かったし、生まれ育った地元をもっと盛り上げたい気持ちがあったから、ここに移ってきました。取り扱っている野菜と果物がカラフルだから、店内はコンクリート打ちっぱなしのシンプルなデザインにしてもらったんです。スーパーより値段は高いけど品質には自信があります。」

店内には野菜と果物だけでなく、ひとつひとつ手づくりされた〈GOOD MORNING FARM〉のピクルスの瓶詰めや、〈Tangerine〉のオレンジジュースなど、他の八百屋では目にしないものも。そのセレクトの基準は味の良し悪しはもちろんのこと、お店に置きたいと思えるパッケージデザインかどうかも、大事な要素だといいます。

海斗さんが目指すのは、新しい八百屋。普段当たり前に食べているものだけど、選ぶものを少しこだわるだけで感動するような風味に出合える。そんな野菜と果物の個性を広めるために、「中三青果店」ではさまざまな取り組みをおこなっています。

例えば、週末限定で販売しているフルーツポンチ。シロップに甘味料を使用せず、旬の果物の酸味や甘味をそのまま味わえると人気です。八百屋になじみのない若い世代からも好評で、スニーカーショップ「atmos」のイベントで提供されたことも。さらに、〈フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)〉とコラボレーションしてオリジナルTシャツをリリースするなど、従来の八百屋とは異なる角度から、青果の魅力を届けています。

「店頭販売や配達だけでは絶対に触れ合えないひとたちと交流できるから、イベントに参加したりコラボレーションさせてもらったりすると、毎回新鮮な反応を見られて楽しいです。以前は音楽イベントのオーガナイザーをやっていて、そのときから音楽だけじゃない付加価値のあるイベントを開催したいと考えていて。その経験がいま活かされていると思います」

川崎産の野菜を広めるために。

野菜や果物がつくられる農園に足を運ぶことも、海斗さんの仕事のひとつ。同じ川崎市内にある「藤田農園」は仕入れ先であり、いとこの利哉さんが働いていることもあって、しょっちゅう訪れている場所です。

「利哉は歳が近くて、ぼくがやろうとしている八百屋の新しい打ち出し方に共感してくれるんですよ。ちゃんと理解して、突飛なアイデアでも一緒になって協力してくれる。『藤田農園』のおかげで『中三青果店』はリニューアルできました」

そんな「藤田農園」の事務所に足を運んでみると、川崎で生まれた菜の花の仲間の新品種、つや菜を出荷しているところでした。農家だからこそ知っている、野菜の性格やおいしい食べ方を教えてもらい、自宅用にバッグに入れてお持ち帰り。

「農家さんの畑にお邪魔するときはカメラを持っていくし、打ち合わせに行くときは手土産にフルーツを持っていくこともあって。『デイパック』は収納力が高いから、たくさん荷物を入れてもパンパンに見えなくてスマートですね。背負いやすくて、どの動作でもすごく動きやすくてストレスがありません」

実際に農園を訪れ、生産者の声を聞き、自分で味を確かめる。海斗さんが大事にするこの時間は、野菜や果物のより美味しい食べ方をお客さんに伝えるために欠かせないものです。

そして、川崎産の野菜をもっと知ってもらい、新丸子をさらに盛り上げるべく、海斗さんは新たなチャレンジを計画しています。

「『中三青果店』のプロデュースで、カフェ&フレンチの飲食店を今年オープンする予定なんです。できる限り川崎産の野菜を使って、地産地消していこうと思っていて。ここに住んでいるひとって、食事をするときに都内に出ちゃうことが多いんですよ。それが悔しいから、おいしくておしゃれなお店を新丸子につくろうと。あと、八百屋って、お客さんが食べて喜ぶ瞬間に立ち会えないじゃないですか。それを見られる場所を作りたいのも理由のひとつ。いずれは農園も手がけ、栽培から調理までを手がけることが目標です」

軸はぶらさず、柔軟な発想で。

「新丸子におしゃれなお店を」。海斗さんがそんな想いを持つようになった背景には、「中三青果店」の近所にあるセレクトショップ「tokishirazu」、そして店主の市ノ瀬智博さんとの出会いがありました。

2000年代にいち早くハイファッションとストリートを融合し名を馳せた名店は、当時ディレクターだった市ノ瀬さんの手によって2021年に新丸子で復活。セレクトは当時と異なりますが、時代の先をいく目利きはいまも変わらず。新鋭ブランドやライフスタイルの雑貨を取り扱い、若手アーティストの展示もおこなっています。

そんな「tokishirazu」に海斗さんは休みの日だけでなく、仕事中にふらっと立ち寄ることも。もちろん買い物もするけれど、市ノ瀬さんと他愛もない話をしたり、仕事のアドバイスをもらったりすることがほとんど。

「市ノ瀬さんは知り合う前から、リブランディングしたばかりの『中三青果店』のInstagramをフォローしてくれて、『tokishirazu』のお客さんにうちをおすすめしてくれていたんです。若い世代をフックアップしたいという思いが伝わってきて嬉しかったですね」

海斗さんにとって、一ノ瀬さんは兄貴分的な存在。実際に一ノ瀬さんに「中三青果店」の活動を手助けしてもらうこともあったそうです。

「その後仲良くさせてもらうようになって、移転から新店舗のデザインまで、実は市ノ瀬さんに相談していたんですよ。ほかにも、『tokishirazu』が渋谷パルコでポップアップをするときに声をかけてくれて、初めてイベントでフルーツポンチを提供できたし、〈フルーツオブザルーム〉のコラボを繋いでくれたのも市ノ瀬さん。こんなかっこいいお店がぼくを認めてくれた気がして、自信になりました」

春服を見る海斗さんは、全身ブラックでコーディネート。普段からブラックばかり好んでいるそうで、選んだ「デイパック」もやっぱりブラックです。コーデュラ バリスティクスナイロンを素材に採用して、ロゴまでブラックで統一した精悍な顔つきは、そんな海斗さんのスタイルにすんなり馴染んでいます。

「かっこいいひとは〈グレゴリー〉を持っているイメージが強くて、〈グレゴリー〉と言ったら『デイパック』。長年愛されることは簡単じゃないけど、『デイパック』は創業からラインナップしているんですよね。流行り廃りがあるなかで、残っているものは本物だと思います。ぼくも八百屋としての軸を持ちながら、地元に愛されつつ、新しいことに挑戦していきたいです」

GREGORY「DAY PACK(ONLINE STORE)」

Photo_Fumihiko Ikemoto
Text_Shogo Komatsu
Edit_Soma Takeda

問い合わせ先 グレゴリー/サムソナイト・ジャパン
電話: 0800-12-36910(フリーコール)
※月曜日~金曜日の10:00~17:00受付(土日祝日・年末年始は除く)
gregory.jp


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