Excellent Maker. SPECIAL01 正能哲也 vol.02

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2014年の大トリを飾るのは、シューズの企画を担当する正能哲也氏にスポットを当てたエクセレントメーカー特別編の第2弾。ニューバランスの現在、そして今後描いていく未来などについて、訊いていきます。第1回目はこちら

--正能さんから見て、ニューバランスの現状はいかがですか?

正能: 現状の日本で見ると、スニーカーとスポーツ全般のマーケットが以前よりも良くなってきているのはありがたい、と思っています。その中でニューバランスのライフスタイルカテゴリーのオーセンティックやヘリテイジの部分が、皆さんから高い評価をいただいているのは掛け値なく嬉しいです。自分が入社してからだと、ビジネス的にも1番良い結果を出していると思います。

--少しバブル感というか、若干"猫も杓子も状態"という声も聞こえてきますが。その辺の危惧はありますか?

正能: ないと言ったら、嘘になります。それと、ブランド全体で見たときに、ライフスタイルカテゴリーだけでなくスポーツ部門も盛り上げて、もっと真のスポーツブランドにならなくてはいけないとも思っています。ですから、「ニューバランスはスポーツブランド」ということを、お客様によりアピールしていくことが新しいチャレンジになります。

--と言いますと、どんな風に進めていく感じですか?

正能: ライフスタイルで言いますと、高い評価を得ているクラシックは、ニューバランスのコアな部分でもあるので絶対に守り続けますし、今後も提案を続けていきます。しかし、逆に言うなら現状はそこばかりに偏ってしまっているのも課題です。ランニングに加えて、新たに提案したテニスは成功したと言えども、今後はテクノロジーだっだりだとか、パフォーマンスに寄ったアイテムをニューバランスから発信し、「ニューバランスで、そういうモデルもアリ」と思っていただけるように成長し、パフォーマンスのラインとの架け橋を生み出し、ニューバランス全体として評価されるようにしたいです。

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--まだ、普段はニューバランスを履くけれど、スポーツするとなった途端に別のブランドのスニーカーに履き替える方は多いですからね。

正能: そうですね。ライフスタイルがターゲットにしているお客様はファッションとして履いてくださっている方が大部分だと思いますが、朝起きてから夜寝るまでをライフスタイルと考えて、そこすべてをニューバランスでカバーできるようなラインナップを整え、提案していけたら、とは考えていますね。

--ちなみに、正能さんはニューバランスに入社する以前に、MADE IN U.S.A.やMADE IN ENGLAND以外のモデルって履いていましたか?

正能: 入社以前は、1stプライオリティがMADE IN U.S.A.でしたから、履いていませんでした。

--では、それ以外のモデルを抵抗なく履けるようになったきっかけは何でした?

正能: 自分は新しもの好きで、「新しいものは面白い」と思っていましたから、抵抗もなく、「MADE IN U.S.A.じゃないから嫌だ」という感覚もなかったです。むしろ新しいテクノロジーを試してみたいという興味の方が強かったですね。ファッションの人というよりはスニーカーの人だったので、ハイテクなスニーカーをどう格好良く履きこなすか、を先に考えていました。

--例えば、ナイキの場合は生産国にはこだわらないブランド、アディダスはフランスメイド、コンバースやVANSはアメリカ製を礼賛する方がいまだに残っているブランドで、そんな中ニューバランスはMADE IN U.S.A.やMADE IN ENGLANDを残しながら、アジアメイドのモデルも多くリリースしていますよね。その違い、それぞれの魅力というのは、どう伝えていきますか?

正能: ブランドとしてはMADE IN U.S.A.やMADE IN ENGLANDを誇りにしながらも、この感覚はとくに日本では敬重されるっていうのはありますよね。しかし、この日本独自の思考は大切で、世界でも評価されているのも現実です。今後も根強く残っていくのか? もしかしたら次の世代はまったく興味がなくなっているのか? その辺は探り探り、いろいろトライしながら見極めていくつもりでして、ひとくちで語れるほど容易ではない気もしますし、明確な答えは見えていないのが正直なところです。

--やっぱり、ニューバランスは独特なブランドですよね。

正能: ニューバランスが高い支持を頂いている、もうひとつのポイントとして「履き心地」というのがあります。これはフィジカルに直接影響しますので、ここの部分は絶対に忘れてはいけないですし、見た目だけでなく、履きやすさに大きなこだわりを持って伝えていくことは欠かさないつもりです。現状、ライフスタイルは歴史的な部分がフィーチャーされることが多いのですが、それ以外で支持を頂いている部分をアピールしたり、履きやすさなど機能面ありきのヘリテイジということを伝えていく必要性は高いと思います。

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--ちなみに、ビルケンシュトックがドイツ製じゃなくなっても、あの履き心地が約束されるなら、僕は買う気がするんです。ただ、M990やM2040がMADE IN U.S.A.以外でリリースされたら、買わないと思うんです。

正能: それは、原体験として「ニューバランス=MADE IN U.S.A.」というのが、1stプライオリティだからですよね。

--でも、「ビルケンシュトック=MADE IN GERMANY」なんですよね...。この違いが自分の中でもモヤモヤしていまして。このイコールが溶け出せば、受け入れられるようになるはずですから、MADE IN U.S.A.以外のニューバランスも好きになってくるんですかね?

正能: 「良いものは良い」ではないですが、確かにMADE IN U.S.A.やMADE IN ENGLANDは良いものを作り上げています。その礼賛のせいで、「MADE IN U.S.A.やMADE IN ENGLAND以外は良くない」という風潮になっているとも思います。しかし、「ニューバランスは原産国に関わらず良いものを作ってお客様に提供している」ことに間違いはないという自負はあります。実際、アジアメイドの履き心地も負けず劣らず良いのが事実です。この部分がもう少し上手に伝えられれば、受け手の方々も変化していくと思います。

--そこも不思議でして、世のMADE IN U.S.A.礼賛でいうと、例えばリーバイス®の場合、昔のアメリカの編み機は不正確で、不揃いに織ったから変則的にアタリが出てカッコイイだとか、オールデンの場合、革が不揃いで左右の色が微妙に違うのが好きだといった"味の話"が多いんですが、ニューバランスはそちら側で評価されるというより、アメリカ特有の先進的な機能の部分で評価されているはずですよね? そう考えると、やはり不思議なブランドですよね?

正能: そうですね。これからは受け手によって評価する部分が大きく変わるブランドに、よりなってくる気もしますね。

--新しいジェネレーションが誕生して、バトンを渡していくうちに変わっていくのかもしれませんね。クラフトマンシップに誇りを持っているブランドがリリースするスニーカーですから、今後も他のスニーカーブランドとは一線を画す、魅力的なアイテムをリリースしてくれると思いますので、期待していますね。

正能: お客様の期待に応え続けられるように、いろいろ試行錯誤を繰り返しながら頑張っていきたいと思います。

--今日はありがとうございました。

この後、スニーカーの進化や、足と靴の一体化など飛躍的な話や、ちょっとオフレコな話へと発展しましたので、この辺で終了したいと思います。

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スタイリング
シューズ:〈ニューバランス MRL996D〉*3月発売予定
ベスト:〈J.CREW〉
シャツ:〈Vainl Archive〉
パンツ:〈J.CREW〉
時計:〈Timex〉

正能哲也
Tstsuya Shono

ニューバランス ジャパンにてシューズの企画を担当。MRT、MRLなど、新しいテクニカルを搭載させたシリーズや、各ブランドとの別注企画はもちろん、2010年にU.S.A.製にて完全復刻させた「M1300」の企画も手掛けるブレイン的存在。

Contribution_Yasuharu Imai
Edit_Ryutaro Yanaka
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