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先日デビューしたばかりの〈ニューバランス(New Balance)〉の新モデル「X-90」。「99Xシリーズ」の各モデルのデザインを一足のなかに散りばめ、新たな可能性を秘めたモデルとして誕生したブランドのルーキーだ。このニューモデルを、6人の若手スタイリストに実生活のなかで1ヶ月間履いてもらった。日々生活をするなかで彼らが感じた「X-90」への所感とは? 全3週に渡って、6名の声をお届けする。記念すべき1回目は、亀井 智さん、吉田周平さんが登場。
亀井さんは普段どんなシューズを履きますか?
亀井スニーカー、ブーツ、革靴といろいろ履きます。最近はスニーカーが多いですね。オールドスクールなものも履きますし、ハイテク系のアイテムも。結構雑食なんですよ(笑)。
モノにまつわる薀蓄などもあまり気にしないですか?
亀井気にしないということはないですけど、そこまで強いこだわりはありません。それよりも靴の背景にあるカルチャーに興味があるかもしれません。例えば、ひと昔前まで〈ニューバランス〉を履くとオタクっぽいイメージがあったと思うんです。それこそ、いまのトレンドであるダッドスニーカーの先駆けのような印象というか。
スティーブ・ジョブスが履いていたりしましたもんね。
亀井そういうカルチャーやイメージを想起させるために、あくまでコーディネートのパーツとして靴を選んでいますね。
機能や履き心地に関してもそこまで気にされていないんですか?
亀井いままではそうでした。でも今回「X-90」を試して、改めて〈ニューバランス〉のすごさに圧倒されました(笑)。やっぱり群を抜いて履き心地がいいです。このソールがいいのかな? 歩いてて気持ちいいなって感じましたね。
デザイン面で「X-90」の印象はいかがでしょうか?
亀井すごくスタイリッシュですよね。しっかりとデザインされていて、ファッショナブルな感じがします。自分が持っている〈ニューバランス〉のイメージとはまた違った印象だし、新鮮な感じがしました。あと、このヒールのデザインがボリューミーでかっこいい。
スタイリングにおいてはどんな合わせをするのがいいと思いますか?
亀井組み合わせを考えるというよりも、何も気にせずに履くのがいいのかなと思います。
というのは?
亀井たまに外国の人がこういうスニーカーを普通に履いてるじゃないですか。ファッションを考えてその靴を買ったというよりも、単純に欲しいから買っちゃった、だから履く、みたいな。そういう感覚がぼくは好きなんですよ。何気ないファッションというか。だからこの「X-90」も、そんな感じで履きたいですよね。
お気に入りをとりあえず履く、といった感じで?
亀井そうです。それに「N」のマークと、このグレーを基調とした配色というだけで〈ニューバランス〉らしさみたいなのが出ますよね。
今日のコーディネートもとくになにも意識されなかったですか?
亀井はい(笑)。でも、なにも考えなくてもマッチする汎用性がやっぱりこの靴にはあるんだと思います。
ちなみに、スタイリストとしてこのシューズを使ってスタイリングを組むなら、どんなコーディネートを組みますか?
亀井〈ニューバランス〉ってモダンというよりも“トラッド”な印象のブランドだと思うんです。だから、スタイリッシュな組み合わせよりも、どこかナードな雰囲気が漂うスタイルにしたいですね。例えば、おじさんっぽいスーツにこの靴を合わせるとか。最近すごくコンサバティブなスタイルが気になっていて、まさにそんな着こなしにハマる靴だと思います。
亀井さんはスタイルのバリエーションが幅広いですよね。
亀井そうかもしれません。むかし古着屋で働いていたときは古着ばっかりだったんですけど(笑)。古着を通してその裏にある時代背景やカルチャーを探るうちに、いろんな着方やスタイルが身につきました。
スタイリストにはどんな経緯でなったんですか?
亀井古着屋時代に師匠である(高橋)ラムダさんに出会ったんです。ぼくが働いてたお店に入る前に、ラムダさんも働いていて、よくリースに来ていました。そこで話していて「スタイリストになりなよ」って言われて、アシスタントにさせてもらったのがきっかけです。
高橋ラムダさんのどんなところに惹かれていたんですか?
亀井おしゃれでカッコいい先輩という感じだったんです。話がおもしろいし、ファッションのことも詳しい。それに、いろんな服に飛びついて自分なりに着こなす術を持っていて、とにかくすごいなぁ、と。ぼくは逆なんです。ラムダさんが感覚的にどんどん前に進むスタイリストなら、ぼくは考えながらやるタイプなんです。
独立してからもう3年近く経過していますが、最後に、今後どんなスタイリストになりたいか教えてください。
亀井いろいろと仕事をしていくうちに段々と自分の好きなことが見えてきました。モードの世界で新しいファッションに挑戦していくよりも、もっとコンサバティブなファッションを追求したいなと思っています。
それこそ、先ほど話されたいた「何気ないファッション」と重なるような気がします。
亀井そうですね。そういった日常的なファッションに何かを足したり、崩したりしながら、おもしろいスタイルをつくりたいと思います。そこに自分らしさがでれば最高ですね。
吉田さんは、スタイリストの宇佐美陽平さんから独立されてどれくらいですか?
吉田約1年半ほどです。
どうして宇佐美さんに師事しようと思ったのでしょうか?
吉田10代の頃から雑誌を眺めていて、いちばん好きなスタイリストが宇佐美さんだったんです。ぼくはもともとサラリーマンだったんですが、3年間会社に勤めたあとに脱サラして師匠につきました。スタイリストが単純に憧れの職業だったんです。
すべてを投げ打ってアシスタントの道を進むというのは、相当な決意が必要ですよね。
吉田そうかもしれませんね(笑)。でもそのくらい憧れていたんです。
実際に宇佐美さんのアシスタントになって、どんなことを学びましたか?
吉田宇佐美さんは、絵作りに対してとにかくストイックなんです。そして柔軟さも学びましたね。
具体的にいうとどういったことなのでしょうか?
吉田撮影前にコーディネートを組んでいたとしても、やっぱり現場に行ってモデルやロケーションを見て「やっぱりこっちのほうがいい」となったときに、咄嗟の判断で別のスタイリングを組むことがよくありました。事前にガチガチに固めるというよりは、いろんなことを想定しながら準備を進めるんです。
なるほど。
吉田それに、すごく細かい部分にもこだわるんですよ。本当に些細なことでも、とことん追求して手間を省みない。妥協をすると、それもヴィジュアルにも反映されてしまうので、とにかく毎回自分のベストを尽くすんです。そういった姿勢はアシスタントとしてすごく影響を受けましたし、実際に独立した後でも実践しています。
吉田さんご自身はどんなファッションが好きなんですか?
吉田ヒップホップに影響を受けました。ニトロ(・マイクロフォン・アンダーグラウンド)、雷、ブッダ・ブランドといった90年代の終わりから00年代初頭にかけての日本のアーティストがとくに好きでした。当時のアーティストって、みんなそれぞれキャラクターが立っていたんですよ。音楽性にしても、ファッションにしても。ラッパーってみんなダボダボな格好していると思われがちなんですけど、そんな中でもそれぞれに個性があって、すごくユニークな時代だったと思います。
ヒップホップが好きだということは、スニーカーにもこだわりが?
吉田好きなアーティストが履いている靴は調べたりしていましたね。バッシュとか、ブーツとか。でも、ローテクなスニーカーを履くことも多かったです。ファッションもヒップホップが軸にあるんですが、一方では自分の好きな服を着たいという気持ちもあって、いろんなファッションにトライしていました。
〈ニューバランス〉を履いていた時期はありますか?
吉田アシスタントの頃はよく履いていました。やっぱり動けてナンボな仕事なので(笑)。
今回「X-90」を1ヶ月間履いていただきましたが、試された感想を教えてください。
吉田もう当たり前のように履き心地はよかったです。とくにフィット感がすごくいいのと、とにかく軽くて、なんだか足と一体化している感覚がありました。あとは脱ぎ履きのしやすさも魅力的でした。家からコンビニへちょっと買い物へ行くときもよく履いていましたし(笑)。そういった機能面はさすがだなぁ、と。
ファッションとしては、どんな日に合わせることが多かったですか?
吉田ショーツやスラックスに合わせることが多かったですね。〈ニューバランス〉のスニーカーは他ブランドに比べるとボリューミーな印象があって、ぼくは普段から太いパンツを穿くことが多いんです。その組み合わせにするとかなり偏ったシルエットになって、いなたい感じになっちゃうんですが(笑)、「X-90」は〈ニューバランス〉のアイテムのなかでも比較的シャープな印象がありました。それに、デザインもどこかハイテクですよね。だから太いボトムと合わせても全然問題なかったです。
今日のコーディネートはどんなことを意識しましたか?
吉田靴が目立つように服はシンプルに合わせました。とはいえ、ベーシックすぎるのもイヤなので、シルエットで遊んでみたり、気の利いたデザインのシャツを選んだりしたところがポイントですね。〈ニューバランス〉って大人に合うブランドだと思うんですよ。アイテムに品があるような気がするんです。だから、きれい目なスタイルにすごくマッチすると思います。
「X-90」を使ってスタイリングを組むとしたら、吉田さんならどんなコーディネートにするか最後に教えてください。
吉田何回かこの靴を履くなかでおもしろいなと思ったのが、太いパンツに合わせたときのトゥーの出方なんです。すそ幅が広いボトムを合わせると、靴のほとんどの部分が隠れて、トゥーだけが表に出る。そのシルエットが、なんかいいなって思ったんです。それにこの靴は他の品番に比べるとシャープだから、太いパンツを穿いたときに、野暮ったさとの対比が足元に生まれるじゃないですか。そのコントラストを表現したいですね。オーバーシルエットのトップスと極太パンツを合わせて、このスニーカーが持っている上品さをうまく引き出したいです。