OLD meets NEW
ニューバランスの574 Legacyに対する 三者三様の証言とスタイル。

- FEATURE

世界でいちばん愛されている〈ニューバランス〉のモデル、「574」。シンプルなデザインでカラーバリエーションも豊富だから、自分に似合う一足が見つかる。ゆえに人種や世代、性別を超えて愛される。そんな「574」に現代的なアップデートを加えたモデル「574 Legacy」が誕生しました。クラシックなモデルと比べて、どんなところが変わったのか? そして、モダナイズされたアイテムをあの人たちはどのように履きこなすのか? 三者三様の「574 Legacy」に対する所感とスタイルをこちらにお届けします。

  • Photo_Kazunobu Yamada
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Hideki Shibayama

80年代のデザインを現代の感覚でブラッシュアップ。

80年代に誕生したオフロードシューズ「576」の系譜を引く「574」。普遍的なデザインで世界中の人々に愛される、ブランドの顔ともいえる存在です。今回アップデートされた「574 Legacy」は“OLD meets NEW”というコンセプトのもとデザインされました。

ラストはスリムな「SL-2ラスト」を使用し、素材には環境に配慮したクロームフリー・スエードを採用。ソールは「327」のようにミッドソールからフレアに広がっていくデザインにして、いま求められるフォルムにアレンジ。さらにアウトソールは凹凸を増やしてグリップ力を高め、よりオフロードに向けた仕様に。

80年代のクラシックなデザインを現代の感覚でブラッシュアップした「574 Legacy」。このシューズを手にしたとき、あの人たちはなにを感じて、どのように履きこなすのか? 〈ニューバランス〉好きを公言する3名のスタイルと証言をお届けします。

ベーシックさが魅力のシューズをコーディネートで特別に。

堀家 龍(WISM コンセプター兼バイヤー)
古着屋、セレクトショップでの販売を経て、ふたつのショップにてバイヤーを務めたのち、PR職へ。2012年に「ウィズム」の立ち上げに参画。現在は同ショップのコンセプター兼バイヤーとして活躍する。ランニング時には必ず〈ニューバランス〉を履いているそう。

「ウィズム渋谷店」は移転してどれくらい経ちますか?

堀家去年の9月に移転したので、約半年ですね。明治通りの真ん前なので、以前のお店と比べると入店数がやっぱり良くて。商品のラインナップは相変わらず自分たちなりのストーリーを感じるものだけを置いているんですけど。

堀家さんのブログを読んでいても、そのストーリーは伝わってきます。

堀家いままでモノが売れるには2つの軸があったんですよ。シンプルにアイテムが魅力的だから売れるパターンと、ストーリーが面白くて売れるパターン。だけど、いまはその両方が必要なんです。

そうなると、SNSだけの発信では伝わりきらないですよね。

堀家そうですね、フィジカルの大切さを実感します。そこはどういうお店で、どういうブランドの服を扱っていて、どんなスタッフが立っているのか。そこが三位一体になっていないと厳しいと思うんです。そうゆうお店っていうのは、いまの時代と逆行している部分もあるのかもしれないですけど。来てくれた10人のお客さんのうち9人にそっぽ向かれても、あとのひとりに面白がってもらうためには、その濃度をどんどん濃くしていくしかないのかなと。

堀家さんもお店に立つんですよね?

堀家むかしに比べて減ってしまっているんですけど、なるべく立つようにしてますね。あとはスタッフとのコミュニケーションも大事ですし。先ほど話しにあったストーリーっていう部分は自分がいちばん感じていることなので、それを如何に純度高くスタッフに伝えるかというのもやっぱり重要なんですよ。ただ売れるよりも、どうして売れたかっていうプロセスがぼくらにとってはもちろん、お客さんにとっても大切なことだと思うので。

自分はデザイナーではないし、「0」から「1」をつくることはできないんですけど、「1」を「10」にすることはできると思うんです。そのためにスタッフとコミュニケーションを取ることや、カラダを鍛えて服が似合う体型をキープするっていうところは、服屋として疎かにできないんですよ。

普段ランニングをされるときは〈ニューバランス〉のシューズを履いているそうですね。

堀家そうですね。やっぱり履きやすいし、走りやすいんですよ。もともとバスケをやっていて、その頃はこのブランドに触れてこなかったんですけど、大人になってランニングをはじめたときに、なんとなく「993」のグレーを手に取ったのがきっかけですね。

これは余談ですけど、移転したあとの渋谷店って床がめちゃくちゃ硬いんです。だから普通のシューズだと足が結構きついんですけど、〈ニューバランス〉を履いていると全然疲れないですね。

ファッションアイテムとして、〈ニューバランス〉のことをどう見ていますか?

堀家シンプルにかっこよくて履きやすいですよね。とくにテディ・サンティスが“Made in U.S.A.”コレクションのクリエイティブ・ディレクターになったあとのアイテムは、コラボレーションものも含めて、すごくファッショナブルだなと思いますね。

今回は「574 Legacy」を履いてもらいましたが、いかがでしょうか?

堀家いいですね。普段ぼくが履いている〈ニューバランス〉のアイテムよりも、グリップ性能の良さを感じます。クッション性があってちゃんと沈むんだけど、踏み込んだときに足運びがスムーズというか。シルエットも上から見たときの形がきれいです。自分が履いてる靴って、鏡の前に立たないかぎり、基本的には上からしか見えないじゃないですか。ぼくはそのときの見えづらを大事にしているんですけど、それがすごくいいです。

スタイリングも「ウィズム」らしさがあふれていますね。「574 Legacy」は誰でも履きやすいベーシックさが魅力のシューズですが、それがすごく上質に見えるというか、コーディネートによって特別なアイテムに昇華されているように感じます。

堀家〈ニューバランス〉はスラックスとかと合わせてキレイに履くことが多いと思うんですけど、うちはあえて激太のデニムのスノーパンツで提案したくて。そこに日本でうちでしか入ってないブランドとかをミックスしたりして。カッコいい服をカッコよく見せたり、チープな服をそのまま見せるのって簡単なことだと思うんですよ。だけど、逆にチープなものを上質に見せたりとか、キレイなものをコミカルに提案するっていうところがウチらしさなのかなと思うので。

腰につけたバンダナと色を合わせているあたりもさすがですね。

堀家根本的にはやっぱりストリートファッションが好きなので。正直、バンダナがあってもなくてもコーディネートは成立すると思うんですよ。だけど、これがあることによってシューズが引き立つし、どうしてもつけたくて。それに「そのバンダナなんですか?」って、みんな気になると思うんです。そのときに「実はこれ、大きなバンダナを摘まんで形状記憶させているんですよ。だからすげぇ伸びるんです」って、会話が生まれるじゃないですか。そういう細やかなことを大切にしたいですね。

では最後に、これから〈ニューバランス〉に期待することを教えてください。

堀家一回履いたら他のモデルも履きたくなるブランドじゃないですか。それだけのクオリティとポテンシャルを持っていると思うんで。意外性のあるコラボレーションで、その振り幅みたいなものを見たいですね。

圧倒的なクオリティの良さに、ファッション性が追加されている。

西野大士(にしのや 代表,NEAT デザイナー)
アメリカのトラディショナルブランド〈ブルックス ブラザーズ〉でのPRを経て、PR会社「にしのや」を2017年に設立。一方で自身がデザイナーを務めるパンツブランド〈ニート〉もスタート。無類の〈ニューバランス〉好きとして、誰もが認める存在。

〈ニート〉はスタートからどれくらいが経ちましたか?

西野今シーズンで丸8年が経過しました。秋冬から9年目に突入ですね。

スタート当初から変わったこと、変わらないことはありますか?

西野やっぱりデザインしているパンツのベースの部分、基本的な型というのは変えずにやってきたつもりですね。そのなかで時代に合わせて少しずつマイナーチェンジやブラッシュアップとか、そうしたアップデートをしてきたんです。〈ニューバランス〉もおそらくそうしたオリジナルを大切にしながら、少しずつ変化を加えていると思うんですけど。世界的なブランドと肩を並べるつもりはないですが、そういうところがリンクしているかなと。

なるほど、ベーシックを守り続けると。

西野どうしてもオーセンティックなものが好きなんですよね。アヴァンギャルドな服を着てオシャレをするよりも、普通の服をファッショナブルに着たいっていうタイプなんです(笑)。

西野さんは自他共に認める〈ニューバランス〉好きとして知られていますが、〈ニート〉のパンツも〈ニューバランス〉に合うようにデザインされていたりするんですか?

西野ブランドをはじめた頃はそうでしたね。ただこの8年間の中でいろいろ学んで、先ほど話したようにさまざまなアップデートをしているんですよ。だから設立当初ほど意識はしていないですけど、やっぱりそれでも〈ニューバランス〉に合うパンツだと思いますね。

普段履いているシューズは、ほとんど〈ニューバランス〉ですか?

西野革靴もスニーカーも履きますけど、スニーカーのときは8割くらい〈ニューバランス〉ですね。ひとつのメーカーで幅広い品番を持っているのはこのブランドだけです。

「574」はお持ちですか?

西野はじめて手に入れた〈ニューバランス〉のシューズが「574」のグレーでしたね。高校2年か3年のときだったと思うんですけど。当時は「この靴、街中でよく見かけるな」くらいの感覚で、自分も試そうかなと思って購入したのを覚えてます。そこからどんどん〈ニューバランス〉にハマって、いろんなモデルに手を出すようになりました。

「街中でよく見かけた」というのは、「574」が〈ニューバランス〉のなかでいちばん売れているモデルだからなのかもしれませんね。

西野そうですよね。当時は〈ニューバランス〉ってすごくニッチなブランドという印象でしたが、いまはめちゃくちゃメジャーになっていて。根本にフィット感や歩きやすさみたいなのがあって、そこは揺るぎない部分じゃないですか。そうしたコアとなる部分に、デザイン性が加わったことですごく人気がでたのかなと思いますね。

今回履いてもらった「574 Legacy」はいかがですか?

西野やっぱり〈ニューバランス〉のオーセンティックなデザインというのは強く感じますね。個人的な気分はいま、もっとニッチな品番のほうにあるんですけど、これはこれで原点だなという感じがして。これから〈ニューバランス〉を履きたいという人にとっては、エントリーモデルとしてすごく最適なんじゃないでしょうか。変わらない良さみたいなものを「574 Legacy」から感じるんです。

通常の「574」との違いは感じますか?

西野野暮ったさが軽減された印象はありますね。これなら女性でも履きやすそうです。あとはフィット感もすごくいい。“Made in U.K.”や“Made in U.S.A.”に通ずるつくりの良さを感じます。ぼくが買った当時のアイテムと比べても、その差は歴然だと思いますよ。そういうクオリティの部分でも、やっぱり〈ニューバランス〉って信頼できるんですよ。

ぼくはボストンの本社にも行ったことがあって、街にいる人たちがみんな〈ニューバランス〉を履いているんですけど、全然ファッションとして履いてないんですよね。

歩いたり、走ったりするための日常的なギアとして見ているんですかね?

西野そうですね。そういうところにぼくはすごく惹かれるというか。先ほど話したように、アヴァンギャルドな服をファッショナブルに着るんじゃなくて、オーセンティックな服をオシャレに着たいというぼくの気持ちとリンクするところがあるんです。

だけど、この「574 Legacy」も含めて、最近の〈ニューバランス〉のシューズはやっぱりデザインがよりファッショナブルになった印象です。シルエットもきれいだし、履きやすい。だからより人気が出そうだなと思います。

最後に、今回のコーディネートについても教えてください。

西野ベースになっている「574」が多くの人に親しまれる品番ということは、これはカジュアルなモデルだなと解釈したんです。それをぼくが履くとしたら、やっぱりその反対というか、セットアップで合わせたいと思いました。スラックスはペインターパンツのディテールを取り入れているので、ややカジュアルになっていてスニーカーも合わせやすいんです。それでインナーはシューズのカラーと合わせてグリーンにして。

スエードのスニーカーに、スエードのセットアップを合わせているあたりも、西野さんらしいですね。

西野これは〈ニート〉のアイテムなんですけど、ウルトラスエードっという素材で、すごく薄くて軽いから着心地がいいんですよ。そういう部分も〈ニューバランス〉とリンクさせています。

「574 Legacy」のようにアップデートされたモデルに惹かれる。

草ヶ谷 駿 / mita sneakers プレス
1994年、静岡県静岡市生まれ。小学校2年生からサッカーをはじめ、高校まで競技を続ける。社会人になってからは地元企業に3年間勤めたあと、2015年よりミタスニーカーズに入社。2020年よりPRを担当しながら店頭にも立ち〈ニューバランス〉の魅力を提案し続けている。

草ヶ谷さんはもともとスニーカーがお好きだったんですか?

草ヶ谷小学校から高校までサッカーをやっていて、靴はすごく身近な存在だったんです。ただ、プレイヤーとしてどうしてもギア目線で靴を選んでいたので〈ニューバランス〉は当時すごく遠い存在だったんですよ。

なるほど。シューズはあくまで競技者としての道具だったわけですね。

草ヶ谷そうなんです。サッカーをやめてタウンユース用のアイテムとして靴が必要になったときに、目に入ってきたのが〈ニューバランス〉でした。静岡出身なんですけど、静岡には国内外のスニーカーショップが多かったんですよ。そうゆうお店に足繁く通って、店員の人と話をしたりするのが好きで。その影響もあって、スニーカーの魅力に気づき、いまでは「自分のしたいこと」として働いています。

いまでこそたくさんのスニーカーショップがありますが、そのなかで独自性を出すためにどんなことを大事にしていますか?

草ヶ谷ブランドやモデルのヒストリーをしっかりと理解した上で、それをきちんとお客さまに届けることです。やっぱりストーリーテリングは重要ですから。たとえば別注をご紹介するにしても、元になるインラインの魅力を伝えることが大事で。僕たちがコラボレーションさせていただく機会があるのもオリジナルがあってこそなので。

今回履いてもらっている「574 Legacy」も、まさに「574」というオリジナルの存在があって生まれたモデルです。

草ヶ谷スニーカー好きも魅力にハマるきっかけは定番モデルからが多いと思うんです。「574」もスニーカーの入り口、エントリーモデルとしてすごく重要なアイテムだと思ってます。いまでは抽選や即完売で買えない定番モデルも増えている中で、いつでも買える存在。真の定番モデルだなと思います。

草ヶ谷もともと“Made in U.S.A.”で「576」というオフロード向けのモデルが誕生して、その後継モデルとして「574」がアジア製で生産されました。“Made in U.S.A.”や“Made in U.K.”のモデルがブランドのクラフトマンシップを体現しているなら、アジア製のモデルは新しいテクノロジーを表現しているように思うんです。

実際に「574 Legacy」に足を通して、どうですか?

草ヶ谷一番印象的なのはソールの部分で、チャンキーなシルエットになっていますが、クッション性を重視すると、どうしてもフラついてしまったり、安定感を失ってしまうんです。だけど、「574 Legacy」に関してはソールがフレアシルエットになって接地面積が確保されているので、安定性もしっかり担保されている。さらにアウトソールは凹凸がラギッドで配置されているので、グリップ力も進歩しているんですよね。そのあたりはオフロード向けにつくられた「576」のDNAを強く感じますね。

そもそも「574」というモデルに対しては、なにか思い出とかあったりしますか?

草ヶ谷アメリカのラッパーたちが様々なカラーバリエーションで当時履いているのが印象的で、足元で個性を出す彼らを見て、いいなって思ってました。そうゆうのって、歳を重ねても忘れられないんですよね。

〈ニューバランス〉に限らず、家にはどれくらいスニーカーがあるんですか?

草ヶ谷正確な足数は把握できてないです…(苦笑)。一時期本当に多くなりすぎて、小さい部屋にも収まるように上限を100足に決めたんです。なのでそれ以上はないですね。

本当にスニーカーが好きなんですね。

草ヶ谷やっぱり自分が体感していいと思ったことを伝えたい。そういう気持ちがあるんです。若いうちは自己投資じゃないですけど、とりあえず買って、履いて、どう感じるかを記憶してという作業をずっとしていました。ニューバランスを代表する品番はひと通り履いてきたので「574 Legacy」のようにアップデートされたモデルにいまは惹かれることが多いですかね。

やっぱり、それも履いて試さないとわからない部分があるんですかね。

草ヶ谷そうですね。先ほど仰っていたように「574」というオリジナルがあって「574 Legacy」が生まれたわけで、両方を履き比べながら、どういった部分に違いがあるのかを理解したいという気持ちがありますね。どっちが良くて、どっちが悪いという話ではなくて、どちらにも魅力はあるんです。とくに〈ニューバランス〉はオリジナルを大事にしているブランドだと思うし、この靴を履くと、ファンの気持ちを理解した必要最低限のアップデートに留めているなとも感じました。その姿勢が魅力かなと。

最後に、今後〈ニューバランス〉に期待することはありますか?

草ヶ谷〈ニューバランス〉って、トレンドに左右されない普遍的なブランドだと思うんです。それをこのまま守ってほしい。それって唯一無二っていうことじゃないですか。ただただ、そうした存在であり続けてほしいですね。