- FEATURE
1982年、〈ニューバランス〉からはじめてのハイキングブーツとして登場した「レーニア」。このモデルが今年、ついに復刻を果たします。ハイキングやキャンプなど、ライトなアクティビティに通用する機能性はもちろん、日々の生活にもなじむ品のあるデザインも魅力の1足。これをあの人はどう履きこなすのか? 3名のファッション賢者に登場いただき、自身の生活のこと、ファッションのこと、そして「レーニア」のことについて語ってもらいましょう。
1982年、アメリカの著名な登山家であるロー・
そんなアイテムを履いて、3名のファッション賢者が登場。彼らはこのブーツをどのように捉え、日々の生活に取り入れるのか? さっそく「レーニア」にまつわる証言を聞いていきましょう。
福田健太郎/Laundry Koffiehuis
2007年に自身のブランドである〈グッドオル〉をスタート。2021年にはアウトドアギア収納に特化した〈ワンタン〉、そして2022年5月にはコーヒーショップである「Laundry Koffiehuis」もオープンし、アパレルからアウトドア、コーヒーに至るまで幅広い提案をおこなう。
「Laundry Koffiehuis」はオープンしてからどれくらいですか?
福田もう5ヶ月くらいですね。ちょっとずつ街に浸透してきた感じはして、自分も徐々に楽しめるようになってきました。コーヒー屋っておもしろいんですよ。
どんなところがですか?
福田いままでずっとファッション畑でやってきたけど、いまはまったく別の人たちとの接点ができたんですよ。もちろんむかしから仲のいい人たちも来るんだけど、地元の人たちとコミュニケーションが取れるのが楽しいですね。
どんな人たちがくるんですか?
福田地元のおじいちゃん、おばあちゃんと、あとは若者たち。だけど、その中間層がすくなくて。
いわゆる30代後半~50代くらいの人たち。
福田そうなんですよ。いわゆるファミリー層っていうのかな、幡ヶ谷の駅からも少しだけ奥まった場所にあるから、この辺りで住んでいる人は少ないのかもしれないですね。
クラフトビールも充実してますが、夜は飲みに来る人も多いんですか?
福田夜というよりは土日の昼間とかに飲みにきたりとか、どこか出かけに行く前にここに寄って一杯飲んでいく人が多いですね。今年からは簡単なフードを出そうかなとも思ってます。まだはじまったばかりだし、可能性はすごく感じてます。
やってて大変だなと思うところはどんなところですか?
福田20年ぶりくらいに立ち仕事をしているんですけど、最初はめちゃくちゃキツくて。
座っているわけにはいかないですもんね。
福田そうなんですよ。9時間くらい立ちっぱなしだから。だけど人間慣れるものというか、だんだんしんどさが解消されてきて。これはお世辞じゃないけど、やっぱり〈ニューバランス〉のスニーカーを履いているとラクだなって本当に思いましたよ。
〈ニューバランス〉は何足くらい持ってますか?
福田10足くらいですね。ぼくは人気がある900番台よりも、「574」とかが好きです。むかしニューヨークへ買い付けへ行ったとき、「フット・ロッカー」で「574」を買って歩き回った思い出とかもあったりして。
「レーニア」はどうですか?
福田これって復刻ですよね? むかし見たことがあって、めちゃくちゃ懐かしいですね。それこそ90年代にこういうハイキングとか、アウトドア系のブーツやスニーカーが流行ってて、その頃を思い出します。最近はトレイルランニング用のスニーカーとかもあったりして、すごくテクニカルじゃないですか。そうしたアイテムとはまたちがう趣があっていい。
なるほど。
福田こういうシューズっていまいちばん熱いですよね。2000代に入ると、ハイテクなものが増えてくるんですけど、その過渡期にあるシューズがいまはおもしろいと思いますね。
履き心地とかどうですか?
福田いいですよ。やっぱり〈ニューバランス〉だなっていう。見た目はブーツだけど、すごい軽いし、履き心地はほぼスニーカーと思っていいんじゃないですかね。ブーツ感は全然ないですね。それに柔らかいし。
今日はフリースとダウンパンツを合わせてアウトドアライクにコーディネートされていますね。
福田ぼくの中で街とキャンプはイコールになってて。キャンプをよくするんですけど、テントで泊まってご飯を食べたりお酒を飲むくらいなら、そこまでの機能っていらないと思うんです。だからその両方で使えるもののほうがミニマルでいいなと思ってて。
街とキャンプはもう同じ服を着ると。それは靴も一緒ですか?
福田そうですね。汚れるからって仕事用の靴をわざわざ用意するわけじゃないし、むしろ仕事しているときもお気に入りを履いていたい。コーヒー屋だと粉とかもこぼれるし、めちゃくちゃ汚れるんだけど、そういうのも気にせず履けるものがいいなと。そういう意味でも「レーニア」は自分に合っていると思いますね。
金子貴文 / BEAMS HARAJUKU
学生時代から「ビームス」でアルバイトをスタートし、現在入社9年目のベテランスタッフ。VMDや店舗マネジメントに従事し、個人の知見を活かした商品企画にも携わる。ストリートカルチャーに精通し、夜な夜なクラブへ繰り出すことも。ヒップホップ、ハウス、テクノなど、ダンスミュージックはもちろん、バンドサウンドも好む。
金子さんは接客でどんなことを心がけてますか?
金子見た目とのギャップというか、はじめてこのお店に来られてぼくを見たら、ちょっと話しかけづらいルックスだと思うんです(苦笑)。だけどその見た目をいい意味で裏切るというか、お客様に寄り添いながらニーズを引き出しつつ、距離を縮めることを心がけてますね。
なるほど。服はどんなアイテムが好きですか?
金子むかしからストリートカルチャーが好きで、音楽やアートから派生した服がやっぱり好きです。あとは音楽でも芸術でも、アーティストから影響を受けたりとか、クラブへ遊びに行ったときに会う人からインスピレーションをもらったりもします。
〈ニューバランス〉に対して、どんなイメージを抱いていますか?
金子学生の頃から「ビームス」で働いているんですけど、その頃はネイビーブレザーに軍パンを合わせて、そこに900番台のモデルや「1300」を合わせるっていうような、ちょっとアイビーっぽいスタイリングが王道でした。
ぼく個人でいうとヒップホップがやっぱり好きで、ラッパーのNasが「574」を履いていたりとか、2000年台に〈ヘクティク〉や〈ステューシー〉がコラボしていたりとか、そういう流れで〈ニューバランス〉を履いている人にグッと来て。自分も履くとしたら、やっぱりそういうイメージでコーディネートを組みたいと思いますね。
「レーニア」もまさにそうしたストリート的アプローチで履かれていますね。
金子2000年代頃に裏原界隈で足元にトレイル系のスニーカーを合わせたり、ハイキングブーツを履いていた人が多かったじゃないですか。ぼくはそのリアル世代ではないんですけど、学生のときに雑誌でそういうスタイリングを見ていて憧れていたんです。だから「レーニア」を見たときに、そうした文脈での着こなしが真っ先に浮かびました。
あと、ぼくはピストバイクに乗るので機能的な服をよく着るんですよ。急に雨が降ってきても大丈夫なようにシェルを着たりとか。そういったアイテムとこの靴の相性はすごくいいだろうなと思ってます。
履き心地はどうですか?
金子足を通した瞬間から軽さを感じて、それに驚きました。見た目の重厚感に反して、すごくライトな感じがして。だから1日中履いていても疲れないと思います。
お店に立っていていろんなお客さんの動向を見ていると思うんですけど、最近はどんなシューズが人気ですか?
金子やっぱりアウトドアやトレイル系のスニーカー、それにハイキングシューズが人気ですね。その中でハイテク系の新しいブランドやアイテムも増えてきている一方で、こうしたクラシックなものにも注目が集まっているように感じます。
そうした中で「レーニア」の特徴を挙げるとしたら、どんなところに注目しますか?
金子スマートさですかね。ハイキングブーツって、やっぱりゴツいイメージを抱きがちですけど、「レーニア」はその中でも落ち着きがある印象です。ボリューミーすぎなくて、入門編としても履きやすいかなと。
ぼくは今日スエットパンツを合わせましたけど、普遍的なストレートジーンズに、クルーネックのスエットを合わせて、足元は「レーニア」を持ってきてもいいと思いますし。
そうした王道的な組み合わせだからこそ、引き立つものもありそうですね。
金子やっぱり〈ニューバランス〉ってニュートラルなイメージがあるから、そうした部分をしっかりと保って、いろんなスタイリングに合わせやすいようにデザインされているところにらしさを感じますね。さすがです。
管野寿哉 / フリーランスデザイナー
セレクトショップ、コレクションブランドにて販売を経験。その後、企画やデザイン業を数年間活動した後、自身がデザイナーを務める〈イエスタデイズトゥモロー〉をスタート。現在はブランドを休止し、フリーのデザイナーとして活動する一方、「スリフトウェアマーケットアンドフリーマーケットツアー」のディレクションを務める。
管野さんのインスタグラムを見ていると、自転車に関する投稿が最近増えてますよね。
管野前職から独立して、移動がすごく増えたんですよ。はじめはクルマに乗っていたけど、案外細かな動きが多くて、クルマだと逆に不便だったりして。それで自転車を買おうとずっと思っていたんです。新品のものでずっと狙っていたやつがあったんですけど、買おうと思っていた時期に冷蔵庫が壊れてしまって、欲しかったやつを断念せざるを得なくなって。
いろいろと情報は集めていたんですか?
管野ディグりまくってましたね。その中で幡ヶ谷に「ウッド・ヴィレッジ・サイクル」っていう自転車屋さんがあるんですけど、気になって行ってみるとヴィンテージのパーツを扱うお店だったんですよ。自分はやっぱり古着が好きだから、そういうところでシンパシーを感じて。店主の方もすごくいい人で、結局買おうと思っていた自転車の半分以下の金額で好みのバイクが組めたんです。
巡りにめぐって、管野さんらしいスタイルに行き着いたと。
管野そうですね。自分の足を動かして、掘って、好みのものを見つけないとダメだなと思いましたね。店主の方と話していると知識量もどんどん増えて、いまはもう2台目を組んでいるところです(笑)。めちゃくちゃハマってますよ。
実際に乗っていて、調子いいですか?
管野めちゃくちゃいいです。仕事で浅草のほうへ行くときも自転車だし、古着の倉庫が晴海にあって、そこへ行くときもこれに乗って行ってます。家は世田谷なんですけど、全然余裕。乗っているのが楽しくて、苦にならないですね。
自転車に乗るようになって、履く靴に変化は生まれましたか?
管野やっぱりグリップが効くものを選ぶようになりました。基本的にはスニーカーなんですけど、週に1回くらいは〈ニューバランス〉も履いてますね。こうゆうハイキング系のシューズはむかしよく履いてましたよ。それこそオリジナルの「レーニア」も持ってましたし。
へぇ~! それはすごいですね。
管野先輩が上手に履きこなしていて、それがすごいかっこよかった。それで自分もスエットのセットアップに合わせてたのを覚えてます。よくよく考えると、それっていまのストリートの着こなしと同じだったりするんですけどね。
今日のコーディネートはどんなことを意識したんですか?
管野ネイビーが好きなんで、それを中心に組みました。この靴にネイビーが入ってて、それに濃紺のデニムを合わせて。さりげないところだと、インナーに着ているフリースの裏地もネイビーだったりするので。
ひさしぶりの「レーニア」、履いてみてどうですか?
管野オリジナルの「レーニア」は甲の部分にもうちょっとボリュームがあったんですけど、これはそれが抑えられて、全体的にスッキリした印象。だけど、いちばんの魅力はカラーリングだと思う。レザーのブラウンと、コーデュラのネイビーの組み合わせがすごくクラシックですよね。ぼくは古着が好きだし、やっぱりそういうところに惹かれますね。
パンツのシルエットが細いから、ストレートなアメカジファッションも洗練されますね。
管野冬にLAへ行くと、現地のおっちゃんはみんなこんな格好をしていて。このスタイリングでパンツが太いと山登りおじさんになっちゃうから、都会的な要素としてシルエットは気にしました。
あとはキャンプのときにも履きたいですね。靴紐をDカンに通すタイプだし、これなら脱ぎ履きもラクじゃないですか。デザインも落ち着いているし、ガチガチのアウトドアギアというよりは、もっとカジュアルな気持ちでいろんな場所に履いていきやすいアイテムだと思いますね。