Talk About New Balance 574
5つのショップによるエクスクルーシブな「574」。
ニューバランスの定番モデルにまつわるアレやコレ。
セレクトショップ編

- FEATURE

流行に左右されず、いつの時代もエバーグリーンな輝きを放つ〈ニューバランス〉の「574」。この度、5つのショップよりそのエクスクルーシブモデルがリリースとなりました。今回はそれを記念して前後編に渡り、各ショップの要人に「574」にまつわるあんな話やこんな話を聞いてきました。前編は「ビームス」のバイヤーである柴﨑智典さんと、「ユナイテッドアローズ」のバイヤー・内山省治さんが登場。おふたりの〈ニューバランス〉に対する想いと「574」に対する所感には、新たな発見がありました。

  • Photo_Yuta Okuyama(Ye)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Hiroshi Yamamoto



柴崎智典
1980年生まれ。2005年より「ビームス」に入社し、現在はメンズカジュアルチーフバイヤーを担当。

内山省治
1975年生まれ。1997年に「ユナイテッドアローズ」に入社。現在はメンズ全体のバイイングを統括している。

常にオーセンティックというか、変わらない良さがある。(柴崎)

「ビームス」と「ユナイテッドアローズ」では〈ニューバランス〉を古くから取り扱っていますよね。はじめに、どのような想いでこのブランドを仕入れているのか教えてください。

柴崎「ビームス」はもともと「アメリカンライフショップ ビームス」という屋号でスタートしました。その名の通り、アメリカの生活に根ざしたアイテムを仕入れるところからはじまったんです。もちろんそこには〈ニューバランス〉も必要不可欠なんですよ。というのも、アメカジという王道的なスタイルを知ってもらうための入り口となるようなブランドだと思っているからです。それはお客さまにとってもそうですし、我々スタッフにとってもそうですね。〈ニューバランス〉をきっかけにアメカジやアメリカという国に対して興味を持ってもらうというか、そういった願いを込めて仕入れさせていただいています。

内山「ユナイテッドアローズ」でレザーシューズやサンダル、スニーカーをお取り扱いする上で、とくに強く意識しているのはクオリティコンシャスで価値のあるものを提供したいということです。そうした視線で〈ニューバランス〉を眺めたときに、〈オールデン〉や〈ジョンロブ〉のようなハイクオリティなレザーシューズと同じようにご提案できるスニーカーだなと思っています。なので、スニーカーというカテゴリーにおいては、中核を担うブランドとしてお取り扱いさせてもらっていますね。

バイヤーとしてではなく、いち個人として、〈ニューバランス〉に抱いている印象やエピソードはありますか?

柴崎中学生の頃に「320」っていう、ナイロンとスエードのコンビのシューズをはじめて履きました。やっぱり〈ニューバランス〉といえば“Made in U.S.A.”とか“Made in U.K.”っていうのがあると思うんですけど、「320」を経て中学生の終わりから高校生なりたてくらいの頃に「576」の代名詞的カラーであるブラウンを履いて、その真髄を知ったんです。

履いてみてどんなことを思いましたか?

柴崎やっぱり履き心地がいいし、〈リーバイス®〉や軍パンとの相性がすごくよくて。さっきも話したように、それによってアメカジに対する興味が湧いたし、楽しさも知ることができました。それで「1300」っていう王様があるのを知ったりだとか、「1700」っていうちょっと値段は張るけどスーツにも合わせられるような素敵なモデルを自分で買ってみたりだとか、「990」っていういまのトレンドのど真ん中にいるようなシューズとも出会ったり。そうやって歳を重ねるごとにいろんな楽しみ方をしてきたんですけど、〈ニューバランス〉って常にオーセンティックというか、変わらない良さがあるんですよね。そこがすごく魅力的というか、どんどん好きになっていきますね。

内山さんはいかがでしょうか?

内山ぼくははじめての〈ニューバランス〉としてどのモデルを履いたか思い出せないんですけど(笑)、いま柴崎さんのお話を聞きながらふと、「ビームス」さんのことを思い出したんです。というのも、ぼくは歳の離れた兄弟や親戚が多くて、みんなが集まったときによく「ビームス」さんへ連れて行ってもらっていたんです。まだぼくが10代の頃ですね。そこで自分の買い物をするわけではなかったんですが、店員さんをみていると、ネイビーのツイードジャケットに軍パンを合わせて、足元は〈ニューバランス〉のスニーカーを履いている方が結構いらっしゃったんですよ。

柴崎おぉ~! そうだったんですね。

内山その組み合わせが個人的にすごく衝撃的で。当時はまだ服の知識なんてなかったですけど、ジャケットにスニーカーを合わせるという感覚がとても新鮮に映ったんです。それで「すごいな」と。

そこからいろんな服に興味を持つ中で、〈ニューバランス〉には他のブランドと違うカルチャーがあるなぁと感じてきました。文化的な香りがするというか、すごく知的で上品な靴だなと。柴崎さんが仰ってたようにオーセンティックで、何十年も変わらない良さがある一方で、テクニカルなカラーリングだったりとか、新しい素材が開発されたりとか、革新的なことにもチャレンジしていて。そこに奥深さを感じますね。

いまでこそ“おしゃれなスニーカー”としてのポジションを獲得した〈ニューバランス〉ですが、むかしはそうした地位とは真逆の印象があったと思うんです。どうしていま、これほどまでの人気を獲得したのだと思いますか?

内山いろんな要素が絡み合ってるので、いろんな捉え方があると思います。ぼくが考えているのは、結局、変わらないからだと思うんです。テクノロジー面はすごく進化しているんですけど、変わらないところは変わらない。企業としてのあり方がきちんとしていて、クオリティコンシャスで、デザインっていう部分も自分たちのアイコニックな部分を大事にしている。いい意味でファッションを追いかけていないんですよね。一方で、ファッションは巡りますよね。トレンドがめまぐるしく動く中で、〈ニューバランス〉はいつの時代も変わらない安心感があるんですよ。だからブランドがファッションに寄せたというよりも、時代のムードがブランドに歩み寄っているんだと思いますね。

柴崎内山さんが仰るように、ものづくりに対して変わらない考え方を持っているというのは、ファッションに関わる人間としてすごくリスペクトしています。ファッションの文脈において、その要所要所でムーブメントが勝手に起きているのだとぼくも思っていて。やっぱりいまはイナたいファッションや、カレッジっぽいものが改めてフォーカスされていて、ハイブランドにもその流れを感じます。そうしたいまのムードに〈ニューバランス〉がフィットしていると思うんですけど、ぼく個人的にはトレンドなど関係なく、いつの時代も変わらない魅力があるブランドだなと思っていますね。

アジアメイドは〈ニューバランス〉の進化した新しい姿。(内山)

〈ニューバランス〉には、さまざまな名モデルが存在しますが、こと「574」に関しては、どんな印象をお持ちですか?

柴崎「574」はもともと、「576」というモデルをより一般化するためにリリースされたアイテムですよね。というのも、「576」はちょっと無骨な印象があるんです。一方で「574」はそうした無骨なイメージが柔らかくなっているというか、優しくなった感じがします。だから女性でも取り入れやすいボリューム感になっていると思うし、ちょうどいい軽さがある。ディテールもクセがなくて、とても汎用性にすぐれたシューズだと思いますね。

内山ぼくも同じ意見ですね。すごくマイルドな靴だと思います。柴崎さんが仰ったように、「576」と比較すると、ボリューム感とかディテールの面ですごくマイルドになったなと。とはいえ、履き心地とかそうした部分はきちんと担保されていますよね。

実は今回このシューズを取り扱わせていただくということで、生まれてはじめて「574」に足を入れてみたんですよ、もうそれは素直に認めさせていただくんですけど(笑)。

一同

内山それで、素直に「あれっ?」て思ったんです。「576」と比べるとシルエットがシュッとしていて洗練されているんですよね。いまってストレスフリーな時代で、そうした生活様式に合わせて服や靴を選ぶ傾向があると思うんですが、ある意味このシューズはそうした時代に合うものなのかなと強く感じました。というのも、履き心地がよくてクオリティも高いというのは当たり前なんですけど、どうゆうボトムに合わせるとか、余計なことを考えなくて済む靴だなと思ったからなんです。「574」っていい意味でクセがなくてどんなスタイルにもマッチする。それが国籍も、ジェンダーも、年齢も超えていろんな人たちに愛される理由なのかなと思いました。

実際アジアメイドに対して思うことはありますか?

柴崎やっぱり“そういう時代”を通ってきたので、〈ニューバランス〉もMadeシリーズの製品を贔屓していました。でも、ここ最近アジアメイドの「1700」や「2002R」がリリースされたときに、自分の中の固定概念が覆された感覚があって。個人的な好みは置いておいて、アリだなと思ったんですよ。

内山そうですよね。ぼくもやっぱり“Made in U.S.A.”、“Made in U.K.”というのは個人的に購買動機のひとつになっていました。でも、ここ最近「そうじゃなければならない」という気持ちは薄れてきました。というのも、やっぱりそれぞれの良さがあるわけです。“Made in U.S.A.”の別注アイテムをつくったときに、やっぱり高揚感を感じますが、予想外の不具合が起こったりもするわけです。でもアジアメイドもすごく精密なんですよ、プロダクトとしての完成度がすごく高い。

「2002R」がリリースされたときも、展示会で気になって手にとってみたら、「これアジアメイドなんですよ」と担当の方に言われて。でも、正直にいいなと思ったんです。だけどマーケットでどう受け入れられるか、確信を持つことができなくて不安だったんですけど、結果的には瞬殺で売り切れて。

内山やっぱり“Made in U.S.A.”、“Made in U.K.”の変わらない良さがありつつ、そこに同じレベルで加わったのがアジアメイドなのかなと。新しい〈ニューバランス〉の進化した姿だと思っているので。そういう意味で、ぼくもアリ派ですね。とくに「574」に関してはアジアメイドと相性がすごくいいと思いますね。

それぞれの「574」について、その魅力を教えてください。まずは柴崎さんからお願いします。

〈New Balance〉×〈BEAMS〉「ML574 TB2」¥16500

柴崎どのブランドにも真っ白くて伝統的なモデルが存在していますが、これもまさにそんなアイテムだと思っています。「574」っていう超定番モデルの、さらに真っ白なバージョンなので、本当にさまざまなスタイルに合うと思うんですよ。

柴崎たとえば今日、ぼくが穿いているようなアイスウォッシュのデニムに白Tや、グレーのスエットを合わせるのがすごくいまの気分に合っているかなと思います。あとは先ほど内山さんが仰ってくれたように、ツイードのジャケットと軍パンに合わせるとか、ダークグレーのスーツとか、ブレザーなどのトラディショナルなアイテムに合わせるのもおすすめですね。ストレートにカジュアルに振ってもいいですし、ドレッシーにも合わせられる万能さがこのカラーリングの魅力ですね。

内山さんはいかがでしょうか?

〈New Balance〉×〈UNITED ARROWS〉「ML574 OU2」¥16,500

内山このカラーってすごく「ユナイテッドアローズ」らしい色であると同時に、〈ニューバランス〉らしい色でもあるなと感じたんです。もちろんグレーという代表的な色がありますけど、ブランドの本社があるマサチューセッツ州ボストンの工場のレンガ色だったり、近くにあるハーバード大学も連想させるカラーリングですよね。あそこに行くと、こういう色のアイテムがイヤでも目につくし、買いたくなるんですよ。

柴崎それ、すごくわかります。

内山ですよね。そしてマサチューセッツといえば、「ユナイテッドアローズ」で〈ニューバランス〉と同等に大事にさせていただいている〈オールデン〉も本拠地を構えていて。そこで使われるコードヴァンもまさにこうゆう色なんですよね。それでアメリカの東海岸らしいトラディショナルでオーセンティックなカラーリングだし、そういう意味では「ユナイテッドアローズ」らしさもあるのかなと。

足元に合わせるとしたらどんな提案をしますか?

内山革靴のような雰囲気をまとったスニーカーだと思うので、しっかりと仕立てられたスーツの足元に合わせることで、スニーカー由来のリラックスした感覚と、スーツの上品な要素をミックスさせるのがいいかなと思います。カジュアルに合わせるのであれば、カシミヤのクルーネックニットにフランネルのパンツもいいですよね。スウェット上下にも合うと思うんですけど、そこにカシミヤ素材を持ってきて品良く引き締めたいです。

内山それと、最近はいろんなテイストのブラックカラーが出てきていて、トラディショナルなスタイルでも黒が当たり前になってきています。そんな感じでモードとトラディショナルな感覚をミックスしたスタイルにも、こういう色は合うと思いますね。すこし新鮮な感じがすると思います。

オリジナルを大事にしてほしい。(柴崎、内山)

では最後に、今後〈ニューバランス〉というブランドに対して期待することを教えてください。

柴崎やっぱりオリジナルを大事にしてほしいと思いますね。ここ最近のスニーカー市場を見ていると、どんどん新しいモデルが出てくるじゃないですか。〈ニューバランス〉はそうしたマーケットの動きを気にすることなく、常にオリジナルを大事にしているし、それを武器にしていますよね。これからどんなトレンドが起ころうとも、とにかく変わらずにいてほしいです。それは他のブランドには絶対真似できない強みだと思うので。

内山オリジナルって大事ですよね。当たり前のことかもしれないですけど、基礎がきちんとしているからこそ、新しい提案にも納得ができるんです。やっぱりオリジナルがなくて、常に新しいものにチャレンジしてますって見せられても、あまり腑に落ちないんですよ。“Made in U.S.A.”と“Made in U.K.”のよさがあって、アジアっていう生産背景もいいよねっていう信頼に繋がるのと同じです。〈ニューバランス〉が持っている上質さ、洗練さ、上品さ、知的さ。そのすべてが信頼なので。それがあるのはオリジナルを大事にしてきているからこそなんですよ。なので、ぼくも柴崎さんと同じく、これからもオリジナルを大事にしてほしいと思います。