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HISTORY OF GL 6000

「GL 6000」の歴史。

Text_Masahiro Minai
Edit_Hiroshi Yamamoto

1985年のデビューした〈リーボック〉の「GL 6000」。ランニング用のパフォーマンスシューズとして開発され、今ではレトロランニングシューズを代表する1足として認知される同モデルは、いかにして約30年という長きに渡り愛され続けることができたのか。ランニングシューズ評論家としての顔も持つライターの南井正弘が綴ります。

高機能だけど目立たない。〈リーボック〉の不遇の過去。

今から20年前にリリースされた〈リーボック〉のインスタポンプフューリーは、現在のストリートシーンに欠かせないスニーカーの代表選手として知られている。そしてこのシューズはカジュアルシーンで大ヒットしたモデルながら、元来はランニングシューズとして開発されたことは、そのデザインから想像に難くないし、〈リーボック〉はランニングカテゴリーにおいて確固たる存在感を示したことを知っている人は少なくないだろう。しかしながら1980年代の〈リーボック〉のランニングシューズは高機能にもかかわらず、目立たない存在だったという不遇の過去があった。

〈リーボック〉というブランドの原点は、1895年にイングランド中部の小都市ボルトンでJ.W.フォスターが自らのシューズの底に釘を打ちつけたことから。「より速く走りたい!」という彼の走ることに対する情熱からスタートしたのである。スポーツシューズ全般を製造する小さな靴工房はその機能性の高さから評判となり、オリンピックに出場する陸上選手からも注文が舞い込むようになったように、この当時彼らが最も得意とするカテゴリーはランニングであった。

このシューズ製造工房は1958年にJ.W.フォスターの子孫によって1958年に〈リーボック〉社に改称されると、ランニング以外にクリケットシューズなどでもイギリス市場において存在感を示したが、看板カテゴリーはランニングで変わりなく、1970年代にアメリカへ進出した際もハンドメイドを強調したランニングシューズがメインプロダクトであった。

そんな〈リーボック〉の歴史が大きく変わるのはアメリカ人ビジネスマンのポール・ファイヤマンがスポーツ見本市で〈リーボック〉のスポーツシューズと出会い、北米の販売権を獲得してから。人気上昇中だったエアロビクスアクティビティに目をつけ、専用モデルのフリースタイルを発表。このモデルはエアロビクス愛好家のみならず、ストリートでも大ヒットし、エアロビクスおよびフィットネスカテゴリーにラインアップされたフリースタイルの派生モデルも良好なセールスを記録したことから、「リーボック=エアロビクス&フィットネス」というイメージが急速に定着することとなった。

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テクノロジー戦争に一石を投じるために開発された「GL 6000」。

1980年代初期の同社のランニングシューズはボルトンで製造されていた著名な都市名をモデル名とした「パリス」「ロンドン」といったレース対応モデル、クッション性と安定性は高レベルにありながら、「レンガのように重い!」と揶揄された「アズテック」など。一部ランナーからは評価されていたが、ナイキ、ブルックス、アディダスといった当時のトップブランドと比較すると、世界最大の規模を誇ったアメリカ市場における販売足数は微々たるものであった。

‘80年代中期から後期になるとスポーツシューズ業界はテクノロジー戦争の様相を呈するようになり、各ブランドは機能性を視覚的にもアピールするようになった。こうなると〈リーボック〉のプロダクトは、基本設計は’70年代から大きく変化しておらず、他ブランドのアグレッシブなデザインのランニングシューズと比較すると見劣りするのは否めなかった。

「ライバルブランドに対抗するインパクトのあるランニングシューズの開発」これが当時のリーボックブランドの急務であったが、こうして誕生したのがGL 6000を始めとしたアメリカ企画アジア生産のランニングシューズコレクションである。この時点でスポーツシューズの生産の中心は韓国、台湾を始めとした極東地域となっており、これら〈リーボック〉のランニングシューズの多くも韓国で製造された。

GL 6000には当時としての最先端スペックとなるグッドイヤー社のINDY500ラバーコンパウンドのアウトソール、異なった密度のEVA素材を使用することで安定性とクッション性の両立を図ったミッドソール、蹴りだし時の前足部の屈曲性を高めるミッドソールの屈曲溝を結集することで、トータルバランスに優れたランニングシューズとして華々しくデビューしたのであった。

強固なブランドイメージゆえに影を潜めたランニングシューズ。

1986年になると〈リーボック〉はエアロビクス&フィットネスシューズの大ヒットもあってアメリカ市場でNo.1シェアを獲得することになるが、皮肉にもこの結果「リーボック=エアロビクス&フィットネス」というイメージが強まり、せっかくGL 6000を始めとしたランニングシューズが数多くラインアップされたのにもかかわらず、ランニングカテゴリーにおける〈リーボック〉のシェアはなかなか上昇することはなかったのである。

その後1990年代に入ってボストンロードのようなヒットモデルが生まれ、アメリカやイギリス市場で〈リーボック〉のランニングシューズは急速にシェアを伸ばしたが、‘80年代の名品たちのことはしばらく忘れ去られていた。

しかしながら2000年代に入り、GL 6000やLX 8500といった当時のランニングシューズが徐々に注目されるようになり、著名な店舗のエクスクルーシブモデルも誕生することによって、ストリートシーンで脚光を浴びることとなった。

GL 6000を始めとした〈リーボック〉のレトロランニングモデルは、ベーシックなデザインでありながら、しっかりとした個性を有しているところが大きな魅力。特にアッパー中足部にアルファベットで大きく「Reebok」のロゴが入るのは、他ブランドと比較しても独自性を感じさせるところである。

次回は「GL 6000の性能」について紹介します。