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『ローリングストーン日本版』の創刊メンバーであり、20年にわたり〈コム・デ・ギャルソン〉のファッション選曲を担当。現在はフリーペーパーやコミュニティラジオ、Webなどオルタナティブなメディアを目指して活動している桑原茂一さん。そんな桑原さんのトレードマークと言えば黒ぶちメガネ。そこには音楽とアイウェアをつなぐ物語が…。
「昔、マイケル・ケインの『The Ipcress File』というスパイ映画があって、そのテーマ曲がすごくカッコよかった。確か1965年だったかな、当時、僕は中学生で小さなトランジスタラジオでその曲を聞いていました。映画はお堅いサラリーマンのスパイもので、マイケル・ケインは黒ぶちメガネをかけていたんです。スーパーマンのクラーク・ケントしかり、当時の黒ぶちメガネはちょっとイケてないサラリーマンの象徴でした」
後の1981年、〈コム・デ・ギャルソン〉の仕事でパリに行った際に1本のアンティークフレームと出会ったという桑原さん。そこに、学生時代に夢中になったマイケル・ケインが重なり、伊達メガネで黒ぶちメガネをかけはじめたとか。
「当時、大きな黒ぶちメガネをかけている人はいなくて、自分でも半分ふざけてかけているところがありました。カッコ悪くてカッコいい、みたいな。後にそのメガネに度を入れようと原宿の眼鏡店に行ったら、『オーダーメイドはいかがですか?』と勧められて。それから何本メガネを作ったかわからない(笑)。『作っては違う、作っては違う』の繰り返し。マイケル・ケインのイメージが強過ぎたんでしょうね」
黒ぶちメガネの理想型を追い求めた桑原茂一さんは、ショップが作るメガネを経て、最終的にインポートブランドで気に入ったフレームが見つかったとか。
1933年生まれ。1965年、映画『国際諜報局』で、メガネを掛けたシニカルなサラリーマン・スパイ役で注目を浴びる。以後、数々の名作で出演を果たし、英国を代表する名俳優に。2000年には長年の活動を称えられ、Sirの称号を与えられる。
「3~4年ほどそのメガネをかけていましたが、あるとき、数年ぶりに『The Ipcress File』を見返してみたんです。そうしたら、そのときにかけていたメガネが、劇中でマイケル・ケインがかけているのと同じモデルだったんです。『あっ、俺のメガネこれじゃん!』って、すごく興奮しましたよ。28歳から30年以上経ってようやく本当の真実がわかりました。ものすごい遠回りですよね(笑)」
まさにアイウェアカルチャーの生き字引。そんな桑原さんは〈レイバン〉にも思い入れがありました。
RX5317F 2000 ¥22,000(税抜き)
「実は原宿の眼鏡店で最初に買ったのが〈レイバン〉です。確かブラウンの『クラブマスター』だったかな。〈レイバン〉は僕の世代からすれば憧れのサングラスで、アメリカに行ったときにアンティークショップとかで見かけると衝動的に買っちゃう。これまでも、何本買ったかわからない(笑)」
サングラスから〈レイバン〉に入った桑原茂一さんは、何本かかけるうちにクリアレンズを入れて愛用するように。そして桑原さんに選んでいただいたモデルは新作の「RX5317F」。やはりと言うべきか、天地幅の深いクラシックなウェリントンです。モデル名はその名も「ウェイファーラー レジェンド」。アーカイブのウェイファーラーから取り入れたオリジナルのラウンドヒンジにレトロな雰囲気が特徴的です。
「これは僕が今までかけてきたメガネの流れに合っています。カタチは割とシンプルだけど、しっかりと存在感のある黒ぶち。あと昔の黒ぶちは重く、かけていると鼻の付け根が陥没するんですよ、その辛さたるや……(笑)。まぁ、それも味があっていいんですが、このモデルは昔のメガネと違ってかけ心地もいいですね」