CULTURER. NEWBOLD 2015 Autumn Winter

ロンドンのスケートカルチャーから紐解く、R.NEWBOLDの2015AWコレクション。

2015.8.07 FRIDAY

2015年秋冬シーズンの〈R.ニューボールド〉のコレクションに映し出されるもの。そのひとつにUKカルチャーであるスケートボードシーンからインスピレーションを受けたものがある。スケートボードがアメリカのものだった時代はとうの昔。今や、世界中で普及し、ストリートをプッシュするスケートキッズは増える一方だ。ただし、スケートボードといっても、バーティカルやスタント的なものからスタイルがものをいうストリートスケートなど実はいろいろある。そこから〈R.ニューボールド〉のインスピレーションになったのは、80年代後半~90年代前半のカウンターカルチャーであったスケートボード。それはロンドナーであるスケーターたちのプッシュから動き出していった……。

Photo_Dominic Marley
Text_Senichiro Ozawa
Edit_Jun Nakada

ロンドンには何があるかって? 世界で最初に開通した、チューブの愛称で親しまれている地下鉄がある。国会議事堂があって、その横に観光名所のひとつ、ビッグベンで知られる時計塔がある。脇を流れるテムズ川も有名だ。それらはガイドブックを開けば誰でも知ることができる。どの国のスケーターにとっても共通することだけれど、彼らにとって肝心なことは、ほとんどガイドブックには載っていない。重要な存在は、インスタグラムなんかでも度々登場するテムズ川の観覧車ではなく、その先にある広場サウスバンクセンターに隣接していたサウスバンク。

ここは90年代のロンドンを代表するスケートスポットであった。ロンドン発のスケートチーム「BLUEPRINT」が、411ビデオシリーズでガンガン滑っていたのがそこだ。ちなみにガイドブックに載っている方のサウスバンクセンターは舞台や映画を上映するアートセンターで、その隣でクリエイティブなストリートパフォーマンスとしてスケートが盛り上がったのは良い意味で因縁じみていた。このあたりのことは、ウィンストン・ウィッターとトビー・シュアルが撮ったドキュメンタリーフィルム『Save the Southbank』を観るといいかもしれない。このタイトルはロンドンの当時のスケートシーンを克明に収めている。

ちなみにこのスポットから西へと向かうとあるピカデリー広場。そこから延びるリージェントストリートの西側には、サヴィルロウというストリートがある。この通りは、日本人にも馴染みのある通りで、その理由のひとつは、日本でいう背広(スーツ)の語源にもなったファッションストリートということ。そしてもうひとつは、カルチャーやファッションに多大な影響を持つ、ビートルズが設立した旧アップル社のビルがあったということ。

映画『LET IT BE』の最後に、屋上で4人が演奏していたシーンを思い出す人がいるかもしれない。それはとても貴重なシーンで、なぜならその演奏を最後に、彼らは二度と揃って人前で演奏していない。映画『ノッティングヒルの恋人』の舞台となった一角、ラティマー・ロード駅から高速の高架下へと向かうところにあった、ミーンファイルも名の知れたスポットだった。離れて並んだコンクリートのハーフパイプのギャップを、カール・シップマンがキックフリップで越えている映像に奮えたスケーターも多い。彼は90年代、イギリスの出世頭のひとりとしてアメリカへと渡り、本場のスケートカンパニー『STEREO』に在籍していた。

他のスポットといえば、ホルボーンのバンク、ロンドンブリッジの10段ステア、モーゲートのレールにチョーキーのレッジ、〈R.ニューボールド〉が2015AWコレクションのカタログで使っているスケートパーク「The Rom」も、負けず劣らず、多くのスケーターに愛されたパークのひとつ。そして、東部のコベントガーデンには、1986年からロンドンのスケートシーンを名実ともに支えてきたショップ「スラム・シティ・スケート」がある。

そういったうねりは、2009年に、ロンドンのスケート・コミュニティPWBCから生まれたブランド〈PALACE〉にまで続いていく。飛ぶ鳥を落とす勢いのこのブランドのライダー、チャーリー・ヤング(写真右)らが今のロンドンを代表するスケーターなら、90年代をスケートキッズとして過ごしイギリスを代表するプロのひとりになった、ニック・ジェンセン(写真左でバックサイド・キックフリップをしている)は生粋のロンドナーといえる。世界でも名だたる渋滞の街であるロンドンで、クルマよりも断然に早くプッシュで移動する彼は、路地から路地へプッシュして長年スポットシークしてきた。「コンパクトな街並がさらにストリートのスケートに拍車をかけてくれたんだ」。彼に言わせれば、この街が持つ独特の環境がこの街流のスケートをつくっていったという。

スケートの本場、アメリカの路面や環境と比べると、ロンドンは確かに石畳の路面のイメージが強く、カリフォルニアのような乾いた風が吹く晴天続きとは雲泥の差のクラウディーな街であるのは否めない。しかし、それだけでスケートに適していないということにはならないのが、ストリートカルチャーの面白いところ。コンパクトで古い街並のロンドンには、世界に誇るパンクムーブメントがあり、ギャップを越えるのを楽しむ土壌や気運があった。渋滞をぬうようにキープ・オン・プッシングしてスポットを掘り出していくスケーターたちがいた。ファッションや音楽、スケートボードがとても近い関係性にあったのも重要だった。そして、それらカウンターカルチャーをフックアップし、ドキュメントするファンジンやパブリッシュメントがあった。だからこそ、それらは今でも輝き続け、今をプッシュする人々のインスピレーションにもなっているのだろう。

〈R.ニューボールド〉が注目する80年代後半~90年代前半のカウンターカルチャーであったスケートボード。それはUKとりわけロンドンを席巻したスケートカルチャーにサウスバンクなどのシーンを牽引してきた重要なスポットの存在、そしてそれにリンクする音楽やD.I.Y志向、パンク・サブカルチャーだ。

その中でもストリートカルチャーマガジンのハシリであった『R・A・D』マガジンは、1987年の創刊から廃刊になる1993年まで、UKを代表するスケートボードマガジンとしての地位を確立し、現在はその時代を切り取った印刷物としても重要視されている。

ダウンジャケット ¥32,000+TAX、Tシャツ ¥5,500+TAX、シャツ ¥12,000+TAX、スウェット ¥8,500+TAX、パンツ ¥14,000+TAXX

〈R.ニューボールド〉の2015AWコレクションでは、『R・A・D』に掲載されていた写真や当時のファッションからインスピレーションを受けたビッグシルエットや、大胆なアートワークを使用したアイテムなどを展開。これらはすべて、〈R.ニューボールド〉による、スケートボードのスタイルや当時のロンドン・スケーターのカッコよさへのジ・アンサーと言ってもいいのではないだろうか。

ポール・スミス リミテッド
電話:03-3486-1500
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