Rookies Appeared. New Balance X-90と6人の若手スタイリスト。 Vol.02 深海佳宏 & 柴原啓介

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先日デビューしたばかりの〈ニューバランス(New Balance)〉の新モデル「X-90」。「99Xシリーズ」の各モデルのデザインを散りばめ、まったく新しいものとして誕生したブランドのルーキーだ。このニューモデルを6人の若手スタイリストのもとへ送り、1ヶ月という時間を過ごしてもらった。日々生活をするなかで彼らが感じた「X-90」への所感とは? 全3週に渡って、6名の声をお届けする。2回目は、深海佳宏さん、柴原啓介さんが登場。実力派スタイリストの目に映った「X-90」の魅力を追う。

  • Photo_Fumihiko Ikemoto
  • Text_Yuichiro Tsuji

Case_03 深海佳宏|「X-90」が足を一歩前へ運んでくれる。

深海さんがスタイリストになろうと思ったきっかけを教えてください。

深海高校のときにおぼろげながらファッションの道に進みたいと思ったんです。それで雑誌を見てたらスタイリストという仕事があることを知って。いろんな雑誌を眺めていたんですけど、印象的なページには全部、ぼくの師匠の名前がクレジットされていたんです。

タケダトシオさんですね。

深海もし自分が誰かの弟子になるなら、絶対この人だなと思ったんです。それでアシスタントになるために、合計3回も履歴書を送りました。

一回ではダメだったんですか?

深海そのときは専門学校卒業のタイミングだったので、いまとなればそりゃあ無理だろうな、と(笑)。その数年後に東京へ上京してきたので、その時にも一回送ったんですけど、またダメで…。やっぱり即戦力を求められますし、募集のタイミングもありますしね。

3回目はどんなタイミングだったんですか?

深海3回目は27歳になってからですね。実は2回目に送ったタイミングと同時に、とある編集プロダクションにも履歴書を出していたんですよ。そこで編集アシスタントをさせてもらえるということになったんです。その編プロは一般的な本の他にハイエンドなファッション雑誌も作っていて、3年くらい働かせて頂きました。でも、やっぱり自分はスタイリストになりたいと思ったので、またタケダさんに履歴書を送ったんです。それでようやくアシスタントになることができました。編集をやっていたなら、なんとなくスタイリストの仕事もわかるでしょ、ということで(笑)。

実際にタケダさんのもとで仕事をされて、いかがでしたか?

深海どの仕事に対しても全力投球な師匠でした。細かなこともこだわったら引かないし、とにかくストイックというか。

なるほど。

深海正直すごく大変でしたけど、それと同じように自分もやれば、継続して仕事ができるだろうな、といまは思ってますね。アシスタントの期間、ずっと師匠を見てきましたが、タケダさんは常にどこかハングリーな感じで、どんな状況でもいろんなことを向上させようとしていました。その姿勢をぼくも見習って仕事をしてます。

独立をされて、今後ファッションを通して表現したいことはありますか?

深海難しい話になってしまうんですが、“死生観”を表現したいんです。というのも、自分の好きなブランドやアーティスト、映画や音楽って、どれもそういったことをテーマに取り上げているんです。それが自分の琴線に触れるみたいなんですよね(笑)。だから、自分がやるならそういうことをテーマにしたいなと思ってます。

ファッションではどんなことに影響を受けてきたんですか?

深海モードの世界です。広島の専門学校に通っていた頃によく行っていたショップがあって、モードブランドをたくさん取り扱っていたんです。「将来こういう服を扱うなら自分でも着ないとダメだな」と自分に言い聞かせて、やっぱり値段はめちゃくちゃ高いんですけどたくさん買ってましたね(笑)

当時、シューズはどんなアイテムを履いてましたか?

深海靴もハイブランドでした。でも、いまはシンプルなのが気分ですね。基本的にはベーシックなものが好きなので。

〈ニューバランス〉は履いたりしましたか?

深海アシスタント時代によく履いてました。やっぱり足に負担がかかる仕事なので、それをケアする意味で。あと、当時はシティボーイというキーワードをよく耳にする時期でもあったので、その影響で自分でも試してみようかなと。やっぱり履きやすさは抜群でしたね。

今回「X-90」を履いてみていかがでしたか?

深海履きやすさはやっぱりさすがの一言です。足首がしっかりと固定されている感じがして、ホールド感がいいのと、歩いてて自分の体を前に進めてくれる感覚があります。なんか靴が前に運んでくれるというか…だからすごく気持ちいいですね、軽くなった気分です。

シューズを選ぶときに、機能性は重視しますか?

深海もちろんです。そこも伴っていないと、履いててストレスになっちゃうので。おしゃれは我慢って言いますけど、やっぱり履き心地は大事だと思いますね。

デザインに関しては?

深海ダッドスニーカーがいま流行ってますけど、そのムードを持ちつつも、いき過ぎてない感じがちょうどいいと思います。〈ニューバランス〉だけあって、スポーティーなデザインも効いていますし。あと、個人的には「N」が小さめなのと、テクニカルなソールのデザインが好きです。

では最後に、このスニーカーを使ってスタイリングを組むなら、深海さんならどんなコーディネートにするか教えてください。

深海個人的な気分ですが、ドレスっぽい提案をしたいですね。きれいなシャツとスラックスに「X-90」みたいな。ちょっとした違和感を生む要素として、このスニーカーを合わせたいです。簡単に言えば“ハズし”ってことなのかもしれません。変に奇をてらうよりも色やデザインを合わせて、一見すると自然だけどよく見ると違和感がある、といったコーディネートを考えたいです。

Case_04 柴原啓介|いろんなポテンシャルを感じるスニーカー。

普段、〈ニューバランス〉のスニーカーは履きますか?

柴原大学生のときに「996」を履いていた時期がありました。今回「X-90」をいただいて、久しぶりに〈ニューバランス〉のスニーカーに足を通した感じです。スタイリングではハイテク系を使うのも勿論好きですが、自分が履くのは基本的にローテク系のスニーカーが多いです。なので、懐かしさと新鮮な気持ちが同時に湧きました。スポーツブランドのスニーカーって、本当に日々進化していますよね。そんな中で〈ニューバランス〉は、他のブランドの派手さは抑え気味ですが、ブランドが抱くスポーツ観を実直に貫いている感じがしていいなぁと思います。

「X-90」の印象はどうですか?

柴原〈ニューバランス〉のスニーカーの中でも、すごくソリッドな印象ですよね。ステッチが最低限しかないし、フロントデザインのポイントといえばパンチングだけ。とはいえ、ソールは厚みがあって特徴的で、そのコントラストがユニークだなと。シルエットもスッキリしていて、どのようなファッションにも取り入れやすそうだなと思います。あと、履き心地は言わずもがなですね。歩くのが楽しくなります、こういう靴を履くと。

どんなシーンで履かれましたか?

柴原撮影現場や、ロケハンの日など、動きの多いシーンで履きましたね。とにかく軽くて。パンチングによる通気性もいいので夏に履くのもおすすめです。

今日はホワイトを基調にコーディネートされていますね。

柴原久しぶりにグレーのシューズを履いたので、それに合わせて白のワントーンにしようかと。ぼくは音楽がベースの人間でして、「X-90」のコンセプトにある“90年代”というキーワードにフォーカスを当てて、当時のオルタナティブやグランジ周辺のスタイルを意識してみました。

どこかカート・コバーンっぽさを感じます。

柴原自分で言うのはとてもおこがましいのですが、まさにそうですね(笑)。カートは1993年のMTVアワードに登場した際に、細ピッチのボーダーロンTにインディゴが色落ちしたパッチワークのクラッシュジーンズを合わせていたのですが、自分はホワイトジーンズでトーンをまとめつつ、ボトムのペイント加工でグランジ感を意識しました。

今日のコーディネートもそうだと思うんですが、やはりファッションを表現する上でモノやスタイルの背景を踏まえてスタイリングを組んでいますか?

柴原モノやスタイル、ブランドといった、それぞれの背景や世界観を知ることで、スタイリングに奥行きが出せると思っています。スタイリストは基本的にアレンジをするのが仕事だと思うので、それらを踏まえた上で、クライアントが求める像とのバランスを保ちながら、自分なりの知識や視点を織り交ぜてアウトプットすることを心掛けています。

アシスタント時代に、師匠である二村毅さんからはどんなことを学びましたか?

柴原二村さんの画作りに対する情熱は物凄かったです。絶対に諦めない。はたして人に伝わるのかどうか、というような細かい点まで、二村さんは常に考えていました。撮影現場でも、「もっと良くなる」と考えながら試行錯誤して、常に柔軟に、可能性を求め続けるというか。そうして仕上がった画には、必ず二村さんのストイックな姿勢が滲み出るんです。それだけ自分の名前にプライドを持って仕事をされていて、その姿勢はとても勉強になりました。

今後スタイリストとしてどんなことを表現していきたいですか?

柴原表現したいことはおぼろげながら多々あるのですが、まだまだ発展途上の身ですので。まずはお声がけいただいた仕事に対して誠実に、少なくとも100パーセント+少しでも自分なりの色を、という形で応えていきたいと思っています。そうしながら自分の考えを熟成させて、いつかファッションストーリーの撮影を任されたときに、おもしろい画作りを突き詰められるようになりたいですね。

では最後に、この「X-90」を使ってスタイリングを組む依頼が来たら、柴原さんはどんなコーディネートをつくるんでしょうか?

柴原先ほどもお話ししましたが、すごくソリッドでストイックなデザインのスニーカーだと思います。ですので、それに合わせてモード寄せというか、手数の少ないソリッドなコーディネートを組みたいですね。タンの部分がしっかり立っているので、クロップドパンツなどの足首を見せるようなパンツを合わせて、トップスはあえて少しボリューム感のあるもっさりとした服を合わせてみたいです。とはいえこのシューズは細身ですが程よいボリューム感もあるので、パンツの太さは選ばないと思います。そういう意味ではいわゆるストリート的な合わせ方も勿論できますし、いろんなポテンシャルを感じますね。