Excellent Maker. SPECIAL04 国井栄之

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さて、2015年もエクセレントメーカー特別編は続きます! 年明け最初の投稿は、ニューバランスはもちろん、日本のスニーカーシーンにおいて欠かすことができない存在、東京・上野のミタスニーカーズのクリエイティブディレクターである国井栄之氏が登場。昨年、580の未来を探るべく訪れたアジア各国、中国・上海で開催されたMRT580のエキシビジョンなど、アジアのスニーカーシーンに触れた国井氏にアジアにおけるスニーカーの未来について訊いてきました。

--まずは、国井さんから見て、現在のスニーカー事情ってどんな感じですか?

国井栄之(以下国井/敬称略): 中途半端なスニーカーブームだなと感じます。決して悪い意味ではなくて、一過性でスニーカシーンを盛り上げている方々って足元のデフォルトがスニーカーではない感じはしますし、かつては「スニーカー=ストリート」な雰囲気がありましたが、ストリート自体の定義も変わってきている気もします。良い意味で、色々なものがクロスオーバーしていてゴチャゴチャな状況で、各メーカーのアイコニックなモデルだけがつまみ食いされるかのように売れている感じで、どこのブランドが突出して売れている感じでもないです。

--となると、スニーカーマニアというよりは、トレンド追従型に近いんですかね?

国井: もちろん、昔のようにつねに買いに来ていただいたり、このブームを通してスニーカー自体を好きになってくださった方も多いですが、「こういう人が、このスニーカーを買うんだ」と思う意外な層もいらっしゃるので、何がきっかけでアンテナに引っかかるのか不明な場合も多いです。

--マーケットとしては右肩上がりなんですか?

国井: そうですね。即完売という事象も多くなってきているとは思います。ただ、今までのブームとの違いを感じるのは今までは日本だけのムーブメントでしたが、現在は日本に在住の外国人や、発売に合わせて外国から買いに来るお客様が多くなっていて、世界連動で飛び火している気がします。

--割合的にはアジアの方が多いですか?

国井: 近いですし、韓国・中国などはスニーカーの上代が日本より高額なのでアジアの方は多いですが、他の国からも多いです。本気で好きな方は何かの発売めがけて旅行をセットして日本に来ていたりしますね。

--昔の日本人が、アメリカに買い物に行っていくついでに旅行していた感覚に近いですね。ところで、先日のMRT580のイベントなどアジアのスニーカーシーンに実際に触れてみて、国井さんには、アジアのマーケットはどう見えていますか?

国井: 少し前だと、スニーカーにおいては日本が中途半端なイニシアチブを持っていて、流れ的には香港に渡り、他の国に広がっていったようなイメージでした。今もこの流れ自体は全くなくなったわけではありませんが、それぞれの国でローカル独自のスタイルが生まれていたり、キーアカウントになりえるショップも誕生して別注モデルをリリースしていたり、例えばシンガポールなどはタイやマレーシアなどの国々をリードしている雰囲気を顕著に感じますね。
一方、中国は市場がとにかく大きくて、コラボだ限定だうんぬんの前にインラインが売れ続けているという状況が続いていて、物が足りないから買うという状態ですね。ニューバランスに関して言うなら、まだまだ伸びるでしょうし、すごい足数を販売しているようですが、街中ニューバランスという状況ではなくて...。あれだけ売れてるのに、これだけしか目につかないんだという市場の大きさに驚きを感じます。さらに、どうしても香港ばかりがフィーチャーされがちですが、上海、北京も大いに盛り上がっていて、ひとつの都市がひとつの国くらい売れ方に違いが見えますから、中国をひと括りで見るのは違う気もしていますね。
韓国は瞬発力がズバ抜けていて、トレンドの隆盛は早いですね。韓国がスゴいのは、ただ物を売るというよりイメージなどを共有しやすいようにパッケージングまで完成させて流れまで作りあげて物を売るのが上手ですね。

--これから、どう変化していくと予想しますか?

国井: 先にも述べましたが、アメリカや日本が先導していくというよりは、アジア各国もより独自性を強めていく気はしますね。ニューバランスでいうならMADE IN USAやMADE IN ENGLANDなどヘリテイジな部分の強みは今後も評価されていくでしょうが、レブライトやフレッシュフォームなど革新的でテクニカルなことに関してはアジア製の方が優れていると思うので、今後スポーツブランドとして認知を高めていき、タウンユース以外でもニューバランスを履いてもらうには、アジア製でテクノロジーが詰め込まれたスニーカーの認知をパフォーマンスとクラシックの双方で高めていく必要があると思いますね。

--これから益々スニーカーシーンは盛り上がってくることが予想されるので、売れる商品が故の「煽り」や「転売」といったネガティブな側面も目につくようになると思いますが、お客様を大切にして販売を行なうミタスニーカーズのように小売りも賢く成長していくと思いますか?

国井: 昨年、中国・上海で開催されたMRT580のエキシビジョンの大義名分は「エデュケーション(教育)」だったと思うんです。レブライトを用いたMRT580はアジアでは圧倒的に売れているんですが、トレンドとして売れているから拍車を掛けようというエキシビジョンではなくて、580というモデルはヘクティクとミタスニーカーズで10年以上コラボレーションが続いたプロダクトで、元々はMADE IN USAの585を日本企画によって改良して人気品番580に成長させ、現在はレブライトを融合したハイブリッドなモデルに昇華されたという流れを中国の消費者にも理解してもらおうというエキシビジョンでした。
凄まじくハイエンドなスペースに、壮大なニューバランスのシューズボックスを模した会場を設営して、 1日目はプレスデー、2日目は発売があったんですが、ただ売るだけではなく作ってきた内容も伝えるべく、過去のヘクティク×ミタスニーカーズの580の展示があったり、580誕生のストーリーがあったり、服と一緒にディスプレイしたスタイルサンプルや、デスクトップ上でカスタマイズをシュミレーションできるコーナーがあったりと、ニューバランスがブランドを語るときに掲げる「Past, Present, Future(過去・現在・未来)」に絡めて展示していました。ですから、盛り上がってるから売り切って駆け抜けようというより、きちんとモノ、コト、ヒトのストーリーも伝えつつ売り続けていこうというアジア側の姿勢の現れだったと感じます。

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--ニューバランス チャイナは、今後ニューバランスを売っていく上では「エデュケーション(教育)」が重要だと気付いているわけですね。

国井: そうですね。ニューバランス ジャパンとのミーティングの中で、日本でのマーケットの広がり方であったりだとか、クラフトマンシップやヘリテイジといった付加価値を享受できたのが日本の影響によるものというのをしっかり理解できているからだと思います。良きモデルケースとして、学んでいますね。

--ということは、ニューバランス チャイナの意思が伝われば、中国のマーケットでは瞬発な爆発だけでとどまらず、ずっと長く爆発が続いていく可能性はありそうですね。

国井: まだまだ可能性は秘めているので、一過性のトレンドではなく、きちんと定着させようと本気になっている感じはします。国としてもスゴく発展しているので、すぐ先の未来がどうなっているかはかなり未知数ではありますけれど。

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スタイリング
シューズ:〈ニューバランス M1300J〉
アウター:〈WHIZ LIMITED〉
インナー:〈WHIZ LIMITED〉
パンツ:〈WHIZ LIMITED x mita sneakers〉
リング:〈TENDERLOIN〉
ウォレットチェーン:〈WHIZ LIMITED × JAM HOME MADE〉

Shigeyuki Kunii
国井栄之

東京・上野のスニーカーショップ「ミタスニーカーズ」のクリエイティブディレクター。さまざまなコラボレーションや別注モデルのデザイン、世界規模のスニーカープロジェクトに携わる。

Contribution_Yasuharu Imai
Edit_Ryutaro Yanaka
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